〇〇〇が乗ってる二見さん


 友達たちといつものように下校している二見さん。を、こっそりつけてる私は今日もサポートができて、達成感で満ち溢れていた。

 あとは問題も起きなさそうだなぁ、なんて気を緩めていると、新たな問題が目の前で発生。

 

 二見さんの頭に葉っぱが乗っかったのだ。おそらく風に乗って運ばれてきたのだろう。

 しかも落下地点がつむじの辺り。抜けてる二見さんでは、あれに気付けるはずもない。


 という私の見立て通り、二見さんは友達たちと楽しくおしゃべりしてる。まさか頭に葉っぱが乗ってるなんて思ってもない顔だ。

 なんてこった、あんな姿を通行人たちに見られでもしたら、


 『おいおいあの嬢ちゃん、狸かなんかかい? 頭に葉っぱ乗せて、化けるつもりかい』

 『あんなスケベな身体してるんだ。どうせろくなものに化けないはず』

 『お色気の術にかかったみたいだ……許せねぇあの女っ! 人の心を弄びやがって』

 『もう二度と悪さできねぇよう、その身体に教え込んでやる!』


 ――と、言いがかりをつけられ、性的暴行を加えられるに違いない! 二見さんの身も心もズタボロにならないように、急いで対処しなければ!


 突風かなんか起きてくれたらいいんだけど、風がぴたりと止んでしまってる。仕方ない、出すか。

 テッテレー(脳内音声)サポートアイテムその7、輪ゴム~!


 ただのなんの変哲もない輪ゴム。家にあったやつだ。

 私はそれを指にはめていく。


 ん、いまからなにをするのかって? 輪ゴムで鉄砲を作って、二見さんの頭にある葉っぱを撃ち抜いてやるのです!

 輪ゴムは割とコントロールしやすいので、こういう場合にはもってこい。飛距離もそこそこあるしね。


 私はうっかり二見さんに当てないよう、極限まで集中する。狙うはあの葉っぱ、ただ一点のみ。

 指で限界まで引き、――放った。

 輪ゴムは直線で進み、狙い通り葉っぱを撃ち抜いた。


 「……?」


 二見さんが違和感を覚えたのか、頭の上をさすっている。でもそこにはもう輪ゴムはないのです。

 葉っぱと一緒にどっかへ飛んでいきましたから。


 「どした環? 頭なんか撫でたりして」

 「はっはーん、なでなでして欲しいんやな。抜け目なさそうで意外と可愛いやつめ、このこのっ」

 「ここかー? ここがええのかー? んんー?」


 前田さん、後呂さんがなんか勘違いをしてるようで、二見さんを撫でてる。う、羨ましい……。

 私も混ざりたかったけど、コミュ障の分際でそんな恐れ多いことできるはずもなく。

 歯を食いしばりながら、柱の陰で眺めることしかできなかった。

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