〇〇〇してる二見さん
食後の後は歯磨きが大事。その定説を守るかのように、二見さんは歯ブラシを持っていた。
これから近くの水飲み場で、歯磨きタイムに入るのだろう。さすが完璧超人の二見さんだ、先に起こる危険性(←虫歯)までも見越しての行動。素敵です!
などと感心しつつ、柱の陰からこっそり覗いてみる。
二見さんは友達たちと楽しそうに歯磨きをしていた。はたからみればポスターにもなりそうなほど美しい光景だろう。
だけど私は気づいてしまった。歯ブラシを咥えてる二見さんに対し、声を上げたくなった。
二見さんたら、えっちすぎるよ!
あんな棒状のものを咥えて、緩急つけて動かして、あまつさえ口元を白くしてるなんて! しかもちょっと垂れてるし!
こんなところを男子たちに見られたら、辱められるに決まってる。周りを囲まれて、口々に罵られるに決まってる。
『おいおい二見、お前なんなの? 俺たちを誘ってるの?』
『ありえねーよな。お前のせいで下半身がイライラしてきたんだが』
『もちろん、治めてくれるよな? そんなエロいこと平気な顔でやってんだからよ』
『どうせ一本じゃ満足できねーんだろ? この
――と、なってもおかしくない。というか絶対なる! 男子たちにはけ口にされちゃう!
私は焦りに焦っていた。二見さんの抜け感は、往来の場であっても、いかんなく発揮されてる。
っ、どうしよう! そうこうしてるうちに、クラスの男子たちがこっちに近づいて来てるではないですか。
このままじゃ二見さんの高校生活が暗然たるものになってしまう。そんなことさせるか!
私は二見さんを守るべく、ポケットから手鏡を取り出した。これで柱の陰から、スナイパー顔負けの攻撃をしてやる。
よし、うまい具合に太陽光がこっちを向いてるぞ。それを使い、光の角度を男子たちに合わせて……くらえっ!
「――うぉっ! なんだ! 急に眩しいぞ!?」
「太陽光か!? でもこの直で当たるような感じ……なんかおかしい! 何者かの意図を感じるぞ!」
「そんなこと言ってる場合か! このままじゃ失明しちまう。回り道していくぞ!」
ほっ、よかった。どうにか男子たちを撃退することに成功したらしい。
そうこうしてる間に、二見さんたちは歯磨きを終えていた。これでいかがわしい目に遭うこともない。
達成感のようなものが胸に渦巻いている。
手鏡越しに覗く自分の顔は、なんか引きつった顔をしてた。うっ、見るに堪えない。
私が二見さんみたいに、うまく笑顔を作れる日は来るのだろうか……。
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