第41話 王都到着
勇者パーティーと別れて包囲網を抜けて、私たちは王都を目指した。
リミッター解除で無理をさせたが点検は滞りなく終わり、各部異常なしなのが幸いだ。
短時間のみの出力上昇なのが、良かったのだろう。
とにかくその後は、再度の待ち伏せによる襲撃を警戒して少しだけ回り道をする。
おかげで特に問題もなく、王都に無事に到着することができたのだった。
遠路遥々コッポラ領からやって来たが、高い城壁に囲まれた巨大な都市には大勢の人々が行き交っている。
正門も一般的な町村よりも遥かに大きく、キャンピングカーも楽々通れそうだ。
だがそれはそれとして先程から列に並んで順番を待っているが。どうにも周りからの視線を感じる。
「注目されていますね」
「我々は目立つので、仕方ないことです」
王都に近づいたときから、ミスリルゴーレムの飛行ユニットはキャンピングカーの屋根に取り付け、徒歩に切り替えている。
これなら全身鎧を着用した身長五メートルの大男に見えなくもないが、旅人や商人や冒険者などの中に紛れるのは流石に無理があった。
それにキャンピングカーもかなり目立つけれど、空間を歪めて収納する便利アイテムはないので仕方ないと割り切る。
「あれは難民でしょうか?」
「道中でも見かけましたが皆、王都を目指しているようですね」
世界中で魔物が大量発生することで、いくつもの町村が襲われて壊滅していた。
なので生き残った人たちは、安全な場所を目指して移動することになる。
実際に王都が外にはいくつも難民キャンプができているのが、その証拠だろう。
(何と言うか、終末感が酷いなぁ)
溜息を吐きながら窓から外を眺めていると、みすぼらしい服を着てガリガリに痩せた少年とその家族と視線が合う。
彼らは私たちの様子を好奇の目で見ていたが、何と言うか哀れに思ってしまった。
(キャンピングカーに積んでる食料の備蓄には余裕があるし、まあ良いかな)
私は世話係のジェニファーに声をかけ、白パンとココアを用意してもらい、彼らの元に持っていくようにと指示する。
「勇者が国王になれば、ノゾミ女王国は全面的に支援を行うでしょう。
遅かれ早かれサンドウ王国の全難民を救済するのですから、先に一人か二人施しを与えたところで大きな問題はありません」
「あははっ、確かにそうですね」
ジェニファーも嬉しそうで、彼女は数名の護衛を付けて難民の元に向かった。
遠くなので良くわからないが彼ら私にお礼を言っているようで、こちらも微笑みながら窓の外に軽くて手を振る。
何とも心温まる光景に一息ついて、私は気持ちを切り替えて考えた。
(今は列に並んで順番を待ってるけど、すんなり通してくれるのかな?)
私は窓の外の景色を眺め、どう考えてもトントン拍子にはいきそうにないと溜息を吐く。
しかし後ろ向きに考えても仕方ないし、明るくマイペースなのが私だ。
なのでもし問題が起きたら、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処すれば良いやとあっさり割り切る。
その後は遠隔操作で自国の政務を行っていると、やっぱり自分たちの番が回ってきた。
普通は数名で対処するのだが、今は奥の詰め所から門番が大勢集まっている。
そして彼らは怪しさ満点のキャンピングカーを囲み、大声で叫んだ。
「お前たちは何処から来た! 目的は何だ!」
秘書のレベッカが答えようとしたが、私はそれを手で制した。
立場的には女王おうなので、自分が代わりに言ったほうが良いと判断したのだ。
「私たちはウルズ大森林の奥地にある、ノゾミ女王国からやって来ました!
目的はサンドウ王国が派遣した特使の返還と、国王陛下への謁見です!」
門番だけでなく、周りで遠巻きに見ていた人々も一斉にどよめく。
さらに私はレベッカに命じて、サンドウ王国が何度も送りつけてきた書状を渡してもらう。
「たっ、確かに! 我が国が送った書状で間違いない!」
門番の代表らしき人が律儀に目を通していく。
念のために他の部下にも確認を頼み、やがて問題なしと判断された。
「では特使の方々は、……馬車? ええと、乗り物の中に?」
馬が引いていないのに馬車と言うのは、どうかと思ったらしい。
だからと言って荷車にしては大きすぎるので迷っていたが、この世界にキャンピングカーはないので仕方ない。
なのでその辺りは適当にスルーして、私は順番に説明していく。
「道中で大勢の野盗に襲われまして、特使の方々が私たちに逃げるようにと」
「それはまた、お気の毒に」
本当はわざと別々に行動したのだが、彼らに伝えない。
仕掛けたのはサンドウ国王だろうし、言ってもややこしくなるだけだ。
「幸い特使の方々は腕が立つので、無事に生き延びているでしょう。
しかし追いつくには時間がかかるため、先に到着した私たちが国王陛下に謁見して報告を行う所存です」
ちなみに即興で考えたが、門番の人たちは納得してくれたようだ。
色んな意味で怪しい集団なので、この程度の怪しさは大したことはないと判断したのかも知れない。
「わかりました。急ぎ確認しますので、今しばらくお待ち下さい」
だがやはり、門番の一存では決められないようだ。
すぐに馬を走らせ、国王に確認しに行く。
その一方で私たちはと言うと長蛇の列から離れて、邪魔にならない位置にキャンピングカーを停車させる。
向こうがどう動くのかはまだ不確定で、結論がでるまでしばらくかかりそうだ。
なので私は世話係に同行を命じて、久しぶりに車外に出る。
自分はゴーレムなので空腹は感じないけれど、腹が減っては戦はできぬだ。
同行者は人間も居るので土の魔石で簡易の
キャンピングカーなので全て車内で行えるが、こういう時ぐらいしか野外で食事なんてしないので、仮想敵国で難民キャンプが近くにあっても構いはしない。
自己中心的な性格な私は、自分が気持ち良くなるために道中で調達した魔物の肉を使い、バーベキューを始めるのだった。
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