第10話 開拓村

 人間たちと接触した私は、色々あって開拓村に行くことになった。

 地面から少しだけ浮く大型トロッコに、必要な荷物を詰め込む。

 しかし冬越しするための食料がどのぐらい必要か不明なため、念を入れて多めに用意しておく。


 幸い自分は、前世から食へのこだわりが強い。

 農業や畜産をガンガン推し進めているため、建物等が集まっているのは中心部分だけで、外周は畑や田んぼや果樹園、さらにはガラス温室がズラリと立ち並んでいる。


 さらに物を捨てるのは勿体ないので、過去に工場生産した大味の食料と一緒に冷凍保存していた。

 しかし当たり前だが私だけで食べ切れるわけがなく、在庫は増える一方である。


 そこでこの機会に村人に分け与えることで、少しでも良いので減らすのだ。

 過去にやり過ぎたせいで全体から見れば減らせても雀の涙だろうが、何もやらないよりはマシである。


 ちなみにゴーレムたちも食欲があって、私に少しでも美味い物を食べさせたがっていた。

 なので大量に生産した中でさらに厳選し、最高品質の食材のみを女王に献上するのだ。

 そっちのほうが完成品の美食レベルが上がり、データーベースで体験するときも高喜びが大きくなるのだった。




 それはそれとして話を現実に戻し、少し前までまた新しい倉庫を建てないといけないと思っていた私は、我が家の車庫に移動して自家用車を乗り込んだ。


 ちゃんと幼女でも足が届くように設計されていて、車輪の代わりに風の魔石が取り付けられている。

 おかげでアクセルを踏むと浮遊状態で走るため、振動も殆どない。


 この飛行機なのか自動車なのか判別が難しい乗り物は、荷物運搬用の大型トロッコと同時期に開発がスタートした。


 ただし完成したのはごく最近で苦労の連続があったのだが、その辺りは置いておく。


 とにかく座席に腰を下ろしてシートベルトをしながら、私は何気なく呟いた。


「そう言えば、冬の樹海を走行した経験ことはないなぁ」


 外見は一人乗りの白い乗用車は、速度や燃料のメーターもあるしエアコンやワイパーも標準装備の優れものだ。


 しかし私は、平らにされた都市部の道しか走行した経験がない。

 今住んでいる都市は荷物の輸送も考えて、道幅が広く取られている。

 直線ばかりなので楽で良いし、現在は十トン飛行トラックや大型バスを開発中だ。


「まあ、皆も一緒だし何とかなるでしょう」


 私一人だけなら絶対に辿り着けないが、仲間のゴーレムたちも一緒なので安心だ。

 スタータースイッチを押して起動すると、視界が少し高くなってライトが点灯する。

 車体が浮き上がって、一定の高さでピタリと止まった。


 いつでも発進できるようになったので、私はハンドルに手をかける。


「でもまさか、私有地で軽トラを乗り回した経験が役に立つとは。

 夢にも思わなかったよ」


 前世では人手が足りないからと、手伝いに借り出されることが良くあった。

 その時に、私有地だからと軽トラの運転を任されたのだ。

 法律的にどうなのかは良くわからないが、おかげで二度目の人生で役に立っている。


 そんなことを考えていると、同行するゴーレムたちの出発準備が整ったと念話で連絡を届いた。

 私は呼吸を整えて、皆に号令を出す。


「それじゃあ、人間の村に向けて出発!」

『了解!』


 急な募集だったが大勢の志願者が出て良かったのだが、都市の防衛にも人手が必要で各々の仕事もある。


 なので全員は連れていけないため、今回はミスリルゴーレムが三体、アイアンゴーレムが十体、ストーンゴーレムが二十体。

 あとはウッドゴーレムが百体という、大所帯で向かうことになった。


 さらに探索や運搬の効率化を図るために、都市を中心にしてクモの巣状に樹海を切り開いてきたが、今は西に向かう道路に人員を集中させている。


 今後も人類と接触する可能性が高いと考えて、何かあった場合に備えて少しでも行き来を楽にしておくのだ。


 あとは樹海の外に存在しているであろう、何処かの国と接触する可能性もあり、油断はできないのだった。






 開拓村の道中は、まだ道が途中までしかできていなくても、かなり楽ができた。

 工事をしてくれているゴーレムたちにお礼を言って別れて、ここから先は未開の地である。


 先頭を進む部隊が障害になる大木や魔物を切り倒しながら、地図を見ながら一直線に突き進む。


 幸い魔物は見つけてすぐ狩られていくので、自分の身に危険が及ぶことはない。

 おかげで時間こそかかったが、これといった問題もなく無事に樹海を抜けることができたのだった。




 なお、まだ正確にはまだ抜けきってはいない。

 何故なら樹海の入口付近に開拓村があるので、ギリギリ外には出ていないのだ。


 そこで外周部の見張りをしていた、探索隊A班のゴーレムたちと合流する。


「お勤めご苦労様」

『仕事ですので』


 アイアンゴーレムに労いの言葉をかけると、率直な感想が返ってきた。

 確かに彼らにとって人間は、実害がなければ割りととどうでも良い存在だ。

 私の命令に従って仲良くしているだけで、出会ったばかりなのもあるが関係構築はこれからと言える。


(さて、果たしてどう転ぶやら)


 自分は人間のことが好きだが信用はしていないし、何とも曖昧な状態だ。

 それでも助けて恩を売っておきたいと考えて、わざわざここまで来たのだった。


 そして私は人間たちに気づかれない場所を探し、そこで自動車のスイッチを切る。

 ゆっくりと地面に降り立ったあとに車の窓を開けると、冷たい風が吹き込んできた。


「大人数で押しかけると迷惑だろうし、ここからは少数精鋭で行くよ」


 流石に百名以上のゴーレムを連れて、開拓村に入るわけにはいかない。

 もし知られれば住民は大混乱なので、最低限の人員だけで向かうことになる。


 探索隊A班の情報を聞く限りでは、人口が百人も居ない小さな村らしい。


「できれば私を含めて、十人以内で行きたいんだけど」


 質はともかくとして、数が相手よりも多ければ人は安心すると、そのような言葉を何処かで聞いた気がした。

 そんな思いつきを口にすると、ゴーレムたちが相談を始める。


『では私が』

『女王様を守護る大任だぞ。お前らに務まるのか?』

『同感だな。ゆえに、ここは俺しかあるまい!』


 チャットは大勢が議論に参加して混沌としている。

 ついでに、何故かこの場に居ないゴーレムたちまで加わっていた。

 ログがとんでもない速度で流れていくが、私は処理能力が高いので問題なく追えている。


「同行者の十人が決まったら教えてよ」


 途中で面倒になったのでチャットを閉じて、自動車の窓を閉める。

 私としてはやる気のあるゴーレムなら誰でも良いし、防寒具を着ていても外気温は冷たいのだ。


 なので車内のエアコンの温風を受けて一息つき、携帯食料として持ってきた黒パンを袋から取り出して、小さな口でモグモグと咀嚼する。


「外での食事も、たまにはいいね」


 生地に混ぜ込んだドライフルーツの甘みを舌で感じて、野外で食べる菓子パンも良いものだと顔を綻ばせる。


 暇なので何となく窓の外の景色を眺めていると、空に浮かぶ雲からちらほらと雪が降り始めた。


 そんな時に、ミスリルゴーレムの一号がゆっくりと近づいてくる。


『女王様、決まりました』


 ゴーレムたちと同じように念話で伝えても良いが、私は少しだけ窓を開けて直接声をかける。


「わかった。じゃあ、行こうか」


 これから人間と交渉するのだから、発声練習も兼ねてゴーレムと話しておくのだ。

 なお、さっきまでは人間たちを怖がらせないために、自動車は置いておこうと思っていた。


 しかし急に雪が降り始めたことで、外に出たくなくなってしまう。

 おまけに風まで強くなってきたので、いくら防寒具を着用していても寒いの苦手である。


 なので私は、大型トロッコの連結が終わったのを確認し、車のスイッチを入れて浮遊モードに切り替える。

 そのまま目の前の開拓村に、一直線に向かうのだった。




 ちなみに編成だが、ミスリル一、アイアン二、ストーン三、ウッド四だ。

 私を含めての最大十名は守られているし、万が一の護衛もこれだけいれば十分だろう。


 基本はゴーレムの自由意志を尊重しているが、上手いことまとまったならそれで良しだ。


 私は自動車を運転して開拓村の門に向かいながら、窓の外の景色を注意深く観察する。


 探索隊の情報通り、村の周りは人の背丈ほどもある木の柵で囲まれていた。

 これが魔物の侵入を防いでいるようだが、率直な感想が自分の口から出る。


「少し不安だね」

『同意』


 一号がすぐに同意したのも当然で、樹海の奥の魔物なら容易く破られてしまう。

 なので私たちは敵の接近を感知したら、自動的に結界が展開するマジックアイテムを開発した。


 魔力は時間経過で回復するし、別々の魔石を切り替えて使ったりと工夫を凝らす。

 ついでにしばらく接近する物体がなければ、一時的にセンサーの範囲を狭めて消費量を抑えたりと色々だ。


 けれどこれまでの情報から、樹海の入り口に近づくほど魔物が弱くなるのがわかっている。

 つまり木の壁でも十分なのだと、少し羨ましく思いながら車を運転していた。


 やがて門の前に到着し、槍を持って村を守っている男性二名の姿を確認する。

 取りあえず車をゆっくり近づけて、一定の距離でピタリと停車して窓を開けた。


「はじめまして」

「えっ? あっ、はじっ!?」

「なっ、何者だ!?」


 武器を向けられて凄く警戒はされているが、ゴーレムに助けられたことは村民の間にも広まっている。

 いきなり攻撃を受けたりはしないので、これなら会話ができそうだ。


 しかし窓の外からは寒い風が入ってきて身震いしてしまうので、早めに終わらせたいところである。


 けれど、そんな嫌そうな表情はせずに、にっこりと微笑みかけた。


「私はゴーレムの女王です」

「ゴーレムの女王だと!?」

「そっ、そんな馬鹿な話が!?」


 今回はゴーレムの上位者として恥ずかしくないように、なるべく丁寧な言葉遣いを心がける。


「ある少女に、母親の病気を治して欲しいと依頼をされました。

 なので、村に入れてくれませんか?」


 他人行儀な接し方で理由を告げる。

 門番の二人は、互いに顔を見合わせた。


「おっ、おい、どうする? 入れるか?」

「相手はエルフだが、幼い女の子だ。

 ゴーレムも服従しているようだし、安全……なのか?」


 何やら相談を始めたが、外は雪がちらほら降ってきている。

 窓を開けっ放しだとエアコンを効かせても寒い風が入ってくるし、早く決めて欲しい。


 私は外行き用の微笑みを浮かべて黙って待つが、何となく長引きそうな予感がする。

 なので少し考えて、ここはプランBで進めることに決めた。


「わかりました。通貨は持ち合わせていないので、これで通してくれませんか?」


 村では食料が足りていないと聞いていたので、自家用車に積んでいる携帯食が入った袋を手に持った。


 良く見えるように窓の外に出して紐を解くと、目の前の二人からゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえてくる。


「わっ、わかった! だがまずは! 物品を改めさせてもらう!」

「くれぐれも妙な真似はするなよ!」


 交渉成立と判断した私は革袋を渡す。

 最初は警戒していた彼らだったが、恐る恐るでも一口食べると態度が一変した。


「こいつは美味い!」

「確かに! こんなに甘くて柔らかいパン! 初めて食べたぞ!」


 二人はすぐに、嬉しそうな表情に変わった。

 空腹なのもあるだろうが、美味しいことは良いことだ。


 しかし、食べてばかりでは話が進まない。

 私は頃合いを見計らい、コホンと咳払いをする。


「そろそろ通してくれませんか?」

「おっ、おう! こっちだ! 付いて来い!

 ただし! くれぐれも妙な真似はするなよ!」


 向こうが攻撃して来なければ反撃する必要もないし、別に開拓村を滅ぼそうとは考えていない。

 けれどゴーレムを十体も連れているので、警戒が解けないのは仕方がなかった。


 だが私個人に対する印象は、少しは良くなったらしい。

 門番の一人が付いて来いと口にして、少女の家まで案内してくれるようだ。




 しかし浮遊する自動車や大型の荷車、それにゴーレムたちが村の中を歩くのである。

 今は季節が冬なので出歩く人が少なく、どの家も扉や窓を締め切って防寒対策をしているおかげで、今はまだ大騒ぎにはなっていない。


 だが偶然視界に入り、ギョッとした表情を浮かべている人たちはそれなりに居た。

 けれど関わり合いにはなりたくはないのか遠くから見ているだけだが、時間をかければ村中に噂は広がる。


 いちいち説明するのが面倒なので、なるべく早く用事を済ませて交渉に移りたいところだ。


 やがて先頭を歩いていた門番が足を止めて、私に声をかける。


「ここだ」


 目の前の家は周りと同じで、何の変哲もないあばら家に見える。

 私としては良くわからないが、案内役が言うならここが目的地なのだろう。


 取りあえず車の扉を開けて外に出て門番に丁寧にお礼を言うと、彼は真面目な顔で返事をする。


「俺は村長に報告してくるが、本当に大人しくしていくれよ?」

「もちろんです」


 私はにっこりを微笑んで答えた。

 すると彼が何度かこちらを見ながら、慌てた様子で遠くに行く。


 ようやく周りに人が居なくなった。

 別に見られて困ることはしないが、人前で演技をするのは案外気を遣うのだ。


 とにかく緊張が緩和したからか、急に体が冬の寒さを感じてブルルと身を震わせる。


「早いところ、用事を済ませましょう」


 門番が去っても、何処で見られたり聞かれたりしているかわからない。

 素を出すのは控えて、視線を感じなくても演技は継続しつつ、目の前の扉をノックする。


 少しだけ間があったが、やがて家の中の足音がこちらに近づいてきた。

 私はノックが異世界でも通じたことに、少しだけ安堵する。


「はーい、どなたですか?」


 知っている女性の声が聞こえたあとに、扉が中から開けられた。

 少女と私の視線が交わる。


 茶髪の女性は最初に自分を見て、次に引き連れているゴーレムたちに視線を向けた。


「えっ、ええと!」


 驚いて完全に動きが止まっていたので、私は単刀直入に目的を告げる。


「貴女のお母さんを治療しに来ました」


 ジェニファーはしばらく硬直していたが、ゴーレムに助けられた経験もある。

 やがて私の言うことを信じてくれたようだ。


 少し緊張しながら家の中に案内されるが、私は扉を抜けたあとに後ろを振り向く。


「扉を通れる者だけ、付いてきてください。

 無理に潜っては駄目ですよ?」


 ゴーレムたちに、そのような指示を出した。

 何しろ体長が五メートルもある一号が、体を屈めて無理やり扉を通ろうとしていたのだ。


『屈めば何とか』

「駄目です。扉が壊れるので諦めてください」

『とても辛い』


 そもそも縦に五メートルもあるというのは、横幅も相当広いのだ。

 絶対に扉に引っかかるに決まっているため、断固拒否である。


 なので結果を言えば、ウッドゴーレム四体が護衛を引き継いだ

 残りの者は万が一に備えて、家の外に待機である。


 取りあえず家の中に入った私は周囲を観察すると、内装は質素だが何処か暖かみがあって安心できる佇まいだと思った。

 そして奥に部屋があることに気づき、そこから声が聞こえてくる。


「ジェニファー、お客さんかしら?」


 自然にそちらに視線が向けられる。

 奥には質素なベッドで横になっている成人女性がいて、顔色がかなり悪いようだ。

 枯れ木のように痩せ細った半身を起こそうとしているが、それを見たジェニファーが青い顔をして駆け寄った。


「お母さん! 無理はしちゃ駄目!」


 ジェニファーの母親で間違いないようで、私は丁寧に会釈をする。

 そして、奥の部屋に向かってゆっくりと歩いて行く。


 すると母の体を支えて再び寝かせた彼女が、今度は慌てて椅子を持ってきてくれた。

 さらに木のコップに水を入れているので、慌ただしくても凄く歓迎されているようだ。


 椅子に座るとギシギシ軋むが、足が折れてお尻を打つことはないので良かった。




 やがて水を受け取って一息ついたところで、私はコホンと咳払いをして改めて話しかける。


「私の名前はノゾミ。ゴーレムたちの女王です」


 両親とは二度と会えないので、未練を断ち切るためにも下の名前だけを名乗った。

 すると目の前の二人は驚いてはいたが、どうにも反応に困っているようだ。


「そっそれはまあ、何と言いますか。凄いわね」

「あっ、うん、そうだね」


 見た目が幼女が堂々と口にしても信憑性は薄いし、ゴーレムを使役する魔法使いにしか見えないだろう。


 なので私は現状を受け入れつつ、目的を果たすべく動き出す。


 ウッドゴーレムに持たせていた箱を自分の目の前に持ってきてもらい、ゆっくりと蓋を開ける。

 すると白く輝く大きな光の魔石が出てきたので、患者の近くの机の上に乗せるように指示を出した。


(パパっとやって終了もできるけど、女王としての威厳がね)


 別に必要はないが、儀式っぽく進めたほうが威厳が出るのだ。

 私は椅子から立ち上がり、ジェニファーと母親に堂々と話しかける。


「それでは、今から病気の治療を行います」


 驚き戸惑う二人であったが、やがて母親が困った顔で口を開いた。


「お気持ちはありがたいのですが、うちでは治療費を払うことができません」


 そう言えば対価に関しては何も言ってなかったと、今さらながら思い出した。

 人間たちに恩を売って、仲良くなれればそれで良かったのだ。


「働いて返すにしても、女王様が満足するような額は、……とても」


 ジェニファーもコクコクと頷いており、二人の視線は机の上に置かれている光の魔石に集まっていた。


(もしかして大きな光の魔石は高級品だから、治療費も高いと思われた?)


 私がゴーレムの女王までは半信半疑だったが、現物が目の前にドーンと置かれたらコイツはやべえと本能的に理解したのかも知れない。


(でも、人間たちと仲良くできればそれで良いしなぁ)


 しかし良く考えれば、無償で病気の治療をするのはよろしくない。

 ならば自分もと、不平不満を言う輩が出てくるのは想像に難しくなかった。


(人の欲望には限りがないって言うし、面倒は避けるべきだね)


 ちなみにジェニファーの足の治療を治したのは、今後は彼女を親善大使に任命することでノーカンにしておく。


 かなり悩んだが、私はベッドで横になっている患者に堂々と告げた。


「治療費は我が国に移民したあと、働いて返してもらいます!」

「「えっ!?」」


 またもや混乱する二人ではあるが、私はすぐに説明するために口を開く。


 だがその直前に、入り口の扉が勢い良く開かれる。

 そして知らない男性が、大きな声で叫ぶ。


「無事か! レベッカ! ジェニファー!」

「フランク!」

「お父さん!」


 どうやら父親が帰宅したらしい。

 ついでに案内してくれた門番と、長老らしき人物まで一緒だ。

 もしかして、この人数を相手にもう一度最初から説明しないといけないかも知れない。


 そう考えると、ちょっと面倒だなと思ってしまう。

 しかし私は女王の演技を続けて、表情だけは穏やかな微笑みを維持するのだった。

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