第86話 部長がキレた

あっちゃん、ユイちゃん、ヨッシー、ユースケ、アリサ、ダン、マルクの7人が教会へ到着した。

新田さんと西野さんは南門近くの借家からなので少し時間がかかり、遅れて到着予定だそうだ。



教会側のメンバーとの顔合わせとなった。


「司祭のザイアスです どうぞよろしく」

「シスター・ダイアンです」

「シスター・ジーラです」

「シスター・ビアンヌです」

「ルーラです シスター見習いです」



こちらもそれぞれ名乗った。


「ヨッシーです」

「ユースケです」

「アツコです あっちゃんって呼んでね」

「ユイです」

「ダン…です」

「アリサです」

「マーしゅ」

「マルクな。俺はカオです」


10代半ばくらいのシスター見習いのルーラちゃんがダン達を他の子供に会わせるために連れて出て行った。


部屋には大人だけが残った。



「部長!」


「中松さん 体調どう?」


「体調はいいんですけどね! それより聞いてくださいよー」


あっちゃんが思い出し怒りをしたようだ。


「聞くから落ち着いて お腹の子に良くないよ」


部長が宥めていると、今度はいつもは優しげな笑顔のユースケが苦苦しい顔で話に割って入った。


「実は3係の土屋さん達がやってきて、そのあと芋づる式にかなりの人数を引き連れ転がりこんできたんです」


「え?」


「3、4、5、6係のこの街にいるほぼ全員がきたのかな?」


「何だって?僕がお願いしたのは6係の大山くんら2名だよ。」


「まぁそうなんですが、土屋さんが次から次と呼んじゃって」


「3係全員で10名と、4、5、6係がそれぞれ2名ずつで合計16名」


「もとからいた私達8名プラス16で24名です〜」


「6LDKに24名も住めるかっての! どんな大家族よ!」



「何だ!それ!」


あ。

部長の眉が吊り上がった!

いつも困った八の字で下がってた眉が、逆八の字に…はならないけど横一直線に。


「それだけならギュウギュウに詰めれば何とか寝起きもできたんだけど、流石に来月の家賃やら生活費を使い込まれちゃうと俺らも怒りますよ」


「はああああああああ?アイツら!いい加減にしやがれ!!!」



あ、部長がキレた。


「出来ない!やりたくない!イヤだイヤだと、いつもモンク!いつもいつもいつもモンクばかり!モンク言ってない時は人の陰口ばかり叩いてやがる!」


あ。部長。激怒(ゲキオコ)


「こっちに来る前から最低だったがこっちに来ても泣き言ばかり、腹減った!頭痛い!腹痛い!風呂入りたい!ベッドで寝たい!帰りたい、家族に会いたい、何でここにいないといけないのって!知らんわ!俺だって帰りたいわ!みんなそうだよ、帰りたいよ…家族にあいたいよ……子供達に会いたい」


部長の吊り上がっていた眉がグンと下がり、目に涙がドワっと湧き上がった。


あっちゃんやヨッシー達も口に出したりしなかったけど、夜に泣いていたのは知っていた。

みんな辛いのは一緒だけど、顔に出さずに頑張っていたんだよ。

部長は辛かったろうな。

その辛さを表に出さずにあんな奴らの相手を親身にしていたのだから。


部長の背中にそっと手を当ててポンポンと優しくたたいた。


「ごめん、申し訳ない、愚痴っちゃったな。おれ」


「いや、いいですよ。辛いのは皆一緒です。部長はよく我慢されていたと思いますよ」


「うん。ありがと、いや、すまん」


部長は手で隠しながら目元の涙を拭っていた。


「もうおれ、部長辞めるから。全員が神殿を出た時点でやまとの部長は辞めようと思ってた。だから鹿野くん、俺に敬語とかいいからね」


「んじゃ、隊長って呼ぼうかな」

「えー何だよそれー」



「ご飯だよーお腹すいたよー食べちゃうよー」


子供達が呼びにきたので一旦話を中断して、皆んなで一緒に食堂に行った。



そこには40人の子供らと司祭様達5人、そして俺たち11人という大人数が集まった。(俺ら8人+部長+新田・西田で11人)

新田さん達は遅れて到着した後、子供達と一緒に食事の準備をしてくれていた。


食堂と言っても広い部屋の壁沿いに長テーブルが2つ置かれていただけで、テーブルの上に置かれたパンやシチューのよそられた椀を持ってそれぞれが床に適当に座って食べていた。


部長もヨッシーもユースケも妻子持ちなので子供にまみれての食事は楽しそうだった。

あっちゃんもユイちゃんも自分の食事よりも乳児の世話を進んでしていた。


ダンとアリサはスラムで見た顔の子らを見つけて一緒にご飯を食べていた。

マルクはここ数日の家でのゴタゴタに不安を覚えていたようで、食事中は俺の膝から離れなかった。

子供は敏感に感じ取ったりするのだろう。


いや、俺、独身だから子供いないからわからないけどさ。

ネットやTVの受け売りです。

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