回想

「リスナーの、皆~!


 今日も、VTuber hitomiヒトミの、YouTube LIVEに遊びに来てくれて、アリガト~♡」


『キタ――(゜∀゜)――!』


『hitomiしか勝たんw』


「hitomiね、実は今、リアル子育てしてるの」


『俺達の、hitomiちゃんがw』


『裏切られたw』


『絶許』


「違う違う、hitomiの子供じゃ、無いよぉ。


 知り合いから、預かってるの」


『本当かよ?w』


「だって、hitomiは、ここに居る、み~んなの、お姫様だもん♡」


『hitomi! hitomi! (゜∀゜)O彡』



「ふぅ……」


「瞳ちゃん、今日も、YouTubeで、生配信?」


俺は、PC前で、バーチャル美少女に成り切る、三十路前の同居人(♂)に、声を掛けた。


「はい。 VTuberとして、週一のライブ配信は、外せませんから」


「……喜んでんの、オッサンばっかじゃね? 楽しい? ソレ」


「そこは、言わないのが、お約束です……」


「リアル彼女欲しー!とか、思わないの?」


「そんなの、欲しいに決まってるでしょ!」


瞳ちゃんは、血の涙を流さんばかりの勢いだ。


「……そう言う、拓児さんは?」


「………居たよ。 一人」


「お」


「大学の時の、サークルの後輩でさ。


 向こうからコクられて、付き合い始めたんだけど」


「うん、うん」


「LINEの返信、半日空いたら、


 夜中でも、鬼電と鬼トーク、100件以上、寄越して来る子だった」


「ガチ地雷じゃないすか」


「付き合って、3~4ヶ月した頃かな……。


 急に、よそよそしくなって。


 或る日、突然、俺の前から、姿を消しちゃったんだよ」


「えっ……原因に、心当たりは?」


「未だに、分からない」


「その後、音沙汰は……?」


「……全く。 大学も、休学しちゃったから、お手上げ。


 今頃は、何処で、どうしてるのやら……」

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