姉妹

ピンポーン


「………………」


ピンポンピンポンp


ドン、ドン


のぞみー? 居るんでしょ? アタシよ」


「あっ、かなえお姉ちゃん。


 待って、今、開けるわ」


ガチャリ


「もう、来る時は、先に一言、連絡入れてよ」


「ご免、ご免。 お姉様は、可愛い妹が心配でね」


そう言って、多賀 叶は、大量の荷物と共に、マンションの部屋に上がり込んだ。


「ハイこれ、差し入れ」


「いつも、有りがと」


「後、缶詰と、乾物と、お漬物と……それからこれ、実家から送って来た、梅干しと、蜜柑みかん(5kg)」


「う、うん……」


「どう? 元気でやってるの?」


「……ぼちぼち」


「本当に、アンタが、いきなり、上京して大学行く、って、和歌山の実家、飛び出した時はさぁ……」


「もう、それは言わないでよ」


「……なのに、一年生の後期で、もう辞めちゃうし。


 父さん、母さんと、連絡は?」


「お母さんとは、LINEしてるけど。


 お父さんとは、あれっきり……」


「……ま、あの頑固親父が折れるには、時間が要るわね」


叶は、フゥ、と息をいた。


「最近、生活の方は、どうなの?」


「あ、うん、どうにかは……」


「まだ、夜の仕事、続けてんでしょ?」


「……あたし、他に、出来る事、無いもん」


「あれだけ、周りの反対押し切って、産んだんだから。


 ママが、頑張らないとね」


「……分かってる、わよ」


シーン……


その時、叶は、いつもは泣き声で騒がしい部屋の、異様な静けさに気付いた。


「あら? 今日は、やけに、静かだと思ったら……


 夢ちゃんは?」

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