大家
「「「カンパーイ!!!」」」
プシッ
グビッ、グビッ……
「ぷはー! この一杯が、たまんねー!」
「だな! くぅーっ」
「ちょっと、星夜さん、アナタ、まだ未成年……」
「瞳ぃ、堅ぇ事言うなよぉ~。
そう言うお前は、まだ呑めねぇの? もう、
「
「麦茶で乾杯なんて、シケてやがんなー。 小学生かよ」
「ばう、あ~?」
「お前は、まだ、駄目だよ。 大きくなったら、な?」
どすどすどすどすっ
「あ?」
「……この、地の底から響く様な、足音は……」
バタンッ
「コラ――ッ!」
「うわっ、出た!」
「出た、って何や、ウチはゴキブリか!
大家を、何やと思てんねん」
シェアハウスの玄関に、鬼の様な
「ハイ、これはこれは、我
今日は、何の御用で……?」
俺は、
「あんた
「げ……」
「何て?」
「朝から晩迄、ビービー、泣き声がする、って!」
あちゃー……。
「隠れて、ペットでも飼ってるんと、ちゃうやろな?」
一ノ瀬さんは、ギロリ、と
「おあ~! おあ~!」
あ……!
「ん? 赤ちゃん?」
ベテラン主婦は、赤ん坊の声を、
「すっ、済みません! 実は、親戚の子を、預かる事になりまして……」
「おあ~!」
「何や、泣き声て、この子かいな」
「あ~! おうあ~!」
「あー、あー、貸してみ。
おう、よしよし」
「キャッ、キャッ」
「おぉ……!」
「何と言う事でしょう」
「鮮やかな、巧みの技……!」
「そら、この女手一つで、二人、育てたさかいな」
一ノ瀬さんを、こんなに頼もしいと思った事は無い。
俺達は、揃って、この出っ腹な中年女性に、初めて、尊敬の眼差しを向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます