近隣

ジリリリリリリン……ジリリリリリリン……



大凡おおよそ、令和の世に似付かわしくない黒電話のベルが、一軒家に鳴り響く。


「はい、はい、待ってや」


とたとた、と、やや小太りな中年女性が、奥から現れた。


カチャッ


「はい、もしもし、一ノ瀬ですけd「ちょっと! 一ノ瀬さん!」


「何や、九条さんとこの奥さんか。


 家、近いねんから、電話やのうても、直接、ウチに寄ってくれてもええのに。


 息子さん、元気にしてはるん?」


「……お宅の、シェアハウスなんですけど!」


「あぁ……」


『シェアハウス』と言う単語が出た途端、一ノ瀬と呼ばれた女性の顔は、一気に憂鬱の色を帯びる。


「何ぞ、ありましたか?」


「こないだから、昼も夜も、引っ切り無しに、泣き声が五月蝿うるさいんですよ!


 何ですか、アレ!?」


「……それ、確かに、ウチが出所でどころで?」


「お宅の住人、前から、深夜に、馬鹿騒ぎしてるでしょ!?


 いい加減、何とかして下さい!」


「へぇ……ほな、確認しますわ」


ガチャン


「はぁ……又、あいつかいな」

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