出社

「おっ、お早うございます!」



ギリギリ、セーフ!


滑り込みで、何とか、始業時間に間に合った。


子安こやす君、ギリギリじゃないか。


 几帳面な君にしては、珍しい。


 新卒で入社して、この春から2年目なんだ、しっかりしてくれよ。 


 他の者に、示しが付かん」


上司の、ヒゲメガネ課長が、釘を刺して来る。


「いやぁ、出掛けに、家の真ん前に、デッカい落とし物が、落ちてまして……ハハ……」


目を泳がせながら、自分のデスクに着く。


「なぁに? 子安、アンタ、律儀に、交番に、届け出てたの?


 相変わらず、お人好しねぇ」


同僚の多賀 叶たがかなえが、デスクで頬杖を突いて、ニヤニヤしている。


「もう、多賀は、うるさいなぁ。 余計なお世話、だっつの」


「おぉ、怖っw」


多賀は、大袈裟なリアクションを付けて、おどけて見せた。


「そーゆーお前は、最近、どうなんだよ?」


「アタシ? まぁ、アタシの気掛かりっつったら、


 目下もっか、あの無鉄砲な、妹の事よねー……」


多賀は、あごの下で手を組み、遠い目をして、ハァ、と溜め息をく。


「ふーん?」


多賀みたいな、バリキャリ女にも、色々、あるんだなぁ。

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