依頼

「アイエエエ!? ナンデ!? 赤チャン、ナンデ!?」


どうする拓児たくじ



「ちょっと、拓児さん。 


 朝っぱらから、玄関口で叫んだりして……ご近所迷惑ですよ」


俺の絶叫を聞き付けて、同居人の一人である、河合 瞳かわいひとみ(♂)が、奥からヒョッコリと顔を出した。


眼鏡の奥から、つぶらな瞳が覗いている。


「ただでさえ、僕、男所帯で、


 『宅飲みで、夜遅く迄騒ぐな』とか、お叱り受けてんですから。


 今度、苦情が来たら、大家さんに、このシェアハウス、追い出されますよ?」


「瞳ちゃぁ~~ん!」


俺は、同居人に、思わず泣き付く。


「ファッ!?


 なななな……何ですか、その、腕に抱えてる、未確認物体Xは!?


 貴方、何処で、こさえて来たんです!」


「俺じゃないよ!


 どうもこうも無いよ、玄関開けたら、2秒でオギャーだよ!


 ドアの前に、捨てられてたんだ」


「えぇ~!? 何で、ウチん家に……?」


瞳ちゃんは、他所よそでやってくれ、と言わんばかりに、頭を抱えた。


かく、俺、今から出勤だから。


 遅刻したら、上司に、ドヤされちまうよ。


 この子をどうするかは、仕事が終わってから考えよう」


「はぁ……。 って、昼間は?」


「瞳ちゃん、完全リモートワークの在宅なんだから、ずっと家に居るだろ?


 俺が会社から帰って来る迄、この子、見ててくれ」


「はぁ!?


 そっ、そんな事、突然、言われても! 困りますよ!」


「じゃっ!」


「ちょっとぉ、拓児さぁ~ん!」


赤ん坊を、一先ひとまず、瞳ちゃんに丸投げして、俺は、会社への道を急いだ。

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