第21話
矢部はゴルフコンペへの出場が決まると何故か上機嫌になり、
「皆さーん、今度のコンペで同じ組になるケイタ君、借りてもいい?」
矢部の面倒をケイタが引き受けた次の瞬間、雫ママは矢部に
「お気に入りのケイちゃんと同じ組にさせて頂きますからね」
とわざわざ知らせに行ったのだった。
他の4人は顔を見合わせて、そもそも最初の頃に矢部を調子付かせたのはケイちゃんなんだからな、レンタルはOKだよな?
一瞬で意思疎通が完了し、悠一が矢部に向かって
「どうぞ、どうぞ、あーはっはっはぁー」
4人の重鎮の総意を代弁してケイタを矢部に売り飛ばしたのだった。
ケイタは自分が売られたことより、4人の意思疎通の速さに驚き
「みんな同じ特殊能力ですか」
と呟きながら、奥の矢部が踏ん反り返るテーブルに向かった。
「矢部さん、当日は宜しくお願いします。ところで、ご自分の車で行くのですか?」
何気無くケイタは聞いてみた。すると、矢部は
「俺のベンツじゃ沢山は乗れないからな、マイクロバス調達して皆様を迎えに行こうかな」
「真面目に言ってます?本当ですか!」
ケイタは当時最も厳しいとされる金融の世界で仕事をしていたが、悲しいくらい素直な?間抜け?なところがあり、直ぐに信じ込んでしまった。
「やっぱり矢部さんは凄いですね。みんなのこと考えてて、、、俺なんて自分のことしか考えないですよ、、、」
「だからな、お前はゴルフも上達しないんだよ。わかったか」
「はい、そうですね。分かりました」
ケイタを売り飛ばした重鎮達は、その会話が丸聞こえで、雫ママも優子も揃って顔を見合わせ、大輝の
「ケイちゃんは、よく分からないトコあるんだよなぁー」
の一言で大爆笑になっていた。
そして達治が続けて
「配車は別の日に決めよう。それにしても、なんで?ケイちゃんはあの会話の流れに納得出来るのかなぁ〜???」
大輝は達治の言葉に反応して
「ケイちゃん、サラリーマンだからなぁ、朝早いしね、疲れてるんだよ」
「いやいやいやいや、あの流れで納得するのはケイちゃんだけだよ」
小ママの優子が珍しく参戦した。
「そうね、少し変わってるからね、ケイちゃんは」
雫ママも追随した。
メモリーズは今日も楽しい時間帯を過ごすことが出来た、、、
嵐の前の静けさとは正にこのことだとは、大輝以外予想していなかった。
大輝はあの半グレ親父のタチの悪さを知っていた為、矢部がこのまま問題を起こさないワケがない、
その時は俺が行くよ、と腹の奥で決めていたのだった。
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