第20話
矢部が自分のスコアについて、悪くても80台後半だと言い放った時、伊達も含めみんなの反応は
「はあー!?」という失笑を感じるものだった。
その反応の中には80台は無理でもラウンド自体は問題なく、そこそこなスコアでまとめてくれそうね!という期待?ではなく、見込みを含んでいた。
だが、重鎮の中の2人の男は、表情を緩めることはなく、寧ろ堅い表情になり、コンペが無茶苦茶にならなければいいが、、、と心配していた。
極めて冷静に判断していたのは大輝と達治だ。
「タイちゃん、120くらいかな? 矢部のオッさんは? 皆んなに迷惑かけなきゃいいけど、、、」
しかし、大輝の判断はそんな生やさしいものではなかった。
大輝は学生時代は甲子園こそ逃したがスポーツ誌から取材を受けるほどの活躍をした選手だった。
また、大人になってからではあるが、半年ほどプロについて徹底的にレッスンを受けたことがあったのだ。それが為に高品質なスイングが完成したのだった。
勿論、レッスンを受けていた頃のスコアは70台だったが、矢部のそれとは違い、全くの事実だった。
実際に、あるスポーツを極めると他の人のプレイは普段の動作を分析処理することによって、その良し悪しについて的確な判断を下せるようになる。
その大輝の見立てでは、矢部は素人よりも打てない、だった。
「相当迷惑な話になるよ。間違いない」
あのカラダのバランスではクラブを振っても当たらない。。。。。
「真面目な話だよ。参加したいメンバーが多すぎた、とか理由付けて断ることは、このタイミングでは無理だもんな?」
「そんなに???そんなに悪いの?」
「面倒見るならいいと思うけど、本当に大変だよ」
雫ママはコンペ自体の主宰だから矢部の面倒まで見ることは出来ない。
誰かいないかな???
はい、いました。
「ケイちゃん、いい?
みんな優勝目指して頑張ってるからさあ、、、
矢部さんにペース乱されたりしたら残念でしょ?
お願い出来る〜???」
実は俺もチャンスあると思って連日練習してたんだけど、、、
と思いながら発する返事は、
「もちろんいいよ。俺はどっちみち、、ね。。。」
伊達は見逃さなかった。
「ケイちゃん、大人になったよな〜。昔は尖ってたのに、ね〜」
「いやいやいや、一番成長したのは伊達ちゃんだよ。
はっきり言って、昔のアレは完全にアウトだったよね?」
「イヤイヤイヤ、ケイちゃん覚えてる?ケイちゃんママの誕生日にさあー」
「わ、っはっはっはっは」
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