第19話

イライラの沸点を迎えた矢部は千鳥足で立ち上がり、メインテーブルへ向かいヨレヨレと歩き出した。


雫ママは不味い、、、

これは不味い、、、と思った瞬間、


大輝は先ほどまでの優しい表情が想像出来ないほど眉間に皺を寄せ既に迎撃態勢に入っていた。


これは、、、不味い、、、


チリリーン


重鎮の1人、伊達が入ってきた。

伊達は即座に緊迫した空気を感じ取りいつもより高めのテンションで


「あれ〜、、、!また???俺ったらタイミング悪かったのかな?大阪からの帰りに雫ママに会いに行こうと思ったら、下でケイちゃんに会っちゃって、、、」


「あれ〜???どうしたの?矢部ちゃんもタイちゃんも立ち上がって、、、ま、さ、か、の一緒にダンス???ですか?」


矢部は気勢を削がれ、大輝は大輝でやや白けてしまった感じで

「やーめた」と呟くとソファーに落ち着いた。


矢部は行き場を失いトイレに入り、雫ママは

「もおー、ドキドキさせないでよ」

と大輝を睨みつけた。


大輝は

「えっ、、、俺?、、、俺が悪いの?」

「いいえ、あいつが悪いから、今度何かやりそうになったら、、、」


「あーはっはっはっはっは、、、出禁だあ、、、」


「俺も、ケイちゃんもまだ飲んでないんだけど、、、」


「じゃあ、モエシャンでいい?」


雫ママが、、、ケイタではなく、伊達に向かって言い放った。


伊達は雫ママも大変だなああああ、と思いながら

「まあ、タバコ代みたいなモンだからいいよ」


伊達ちゃん、ありがとう。


「はあーん!じゃあ、俺もロゼ入れてくれる?」

と、大輝


「はあーん!なーにーっっ。。。そうなの?」

と、ケイタ。


「あーはっはっはっはっはっは、っつっっつツボにはいいた、はっはっは」

悠一は言葉にならず。


「久しぶりに5人そろったなあ、、、」

感慨深げに達治がつぶやいた。


そして続けて


「伊達ちゃん、ごめんちょっとだけゴルフの段取り相談していい?」

「もちろん、俺はあのオッサンの相手でもしてようか?」

「あ、、、お願いしていいかしら」

「雫ママにいわれたら仕方ないなあ、、、ゆうちゃん、飲もうか」

「あれ?わっはっはっはっは」


ゴルフの話は皆一様に好きだった。大輝はケイタに

「いつ?いつ?いつつつつーーー?100切るの???」

「まだ、まだ、まだあああああ、待ってくださいいいい」


唯一、ただ1人100が切れない男、ケイタはこの話題が大嫌いだった。

「わっはっはっはっは」

悠一もメキメキ上手くなっていて、ケイタの今のライバルはつい最近初めてクラブを握った遥しかいなかった。


「ねえ、今度のコンペ遥ちゃん来るの?」

と、そこへ、今までトイレに潜み話を聞いていた矢部が遠慮なく、いやいや、土足で入ってきて


「何だ?ケイタ、100も切れねーのか?俺が見本みせてやるよ」


「矢部さん、ゴルフ出来るんですか?」

ゴルフが好きな雫ママは全く無邪気に聞いた。


「まー、70台は無理だと思うけど、悪くても80台後半だな」

これには皆、一斉に


「はあーーーーー!!!!!」


矢部のメモリーズ杯コンペ出場が決まった瞬間だった。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る