第2話
大輝が中学校を卒業するまで過ごした町は漁師町の雰囲気を持つのどかな田舎だった。
しかしながら、大輝の周辺だけはこの頃も騒がしかった。
当時、同じクラスで仲良くしてた悠一が、ある日、目を腫らしたまま学校に来たのだ。
大輝は勿論理由を聞かずにはいられなかった。
「悠一、目が腫れてるけどどうした?」
「いやー、転んだだけだよ」
「嘘だ、転んでそんなに腫れるワケない」
「ケンカなんてしてないから」
悠一は正直者で嘘がつけない少年だった。
見かけと違い繊細な大輝にはピンと来るものがあった。
「隣りの学校の奴らだな」
「だから、転んで膝を打っただけ」
「はぁ?腫れてるのは目だぞ」
やはり悠一は嘘がつけない性格だったのだ。
大輝には心当たりがあった。
大輝と悠一は学校単位にある野球チームに参加している。
先日、隣町のチームと練習試合があったのだが、その際、試合前にヤンチャな相手選手が大輝の生意気な顔付きが気に入らないと絡んできたのだ。
大輝は即座に反応し、腰を低く落として得意の右ストレートの体勢に入ったのだが、正義感の強い悠一が間一髪、間に入って大輝の右ストレートを止めたのだった。
「僕らは野球の試合をしに来たのだから、ケンカはよくないよ。そもそもケンカ自体何の意味もなく、、、、、」
悠一は理屈っぽく色々言ったあと、最後に
「このケンカ、俺が預かった」
と、どこかの映画のワンシーンで覚えたセリフを吐いた。
相手のヤンチャくれ坊主は、大輝が右ストレートのモーションに入った際、反射的に目を閉じて、ショックを受け止める体勢をとっていたために、悠一のウンチク部分は耳に入っておらず、悠一が、このケンカを預かった、と言った部分だけをしっかり記憶したのだった。
試合自体は、運動神経抜群な大輝の、走攻守にわたる活躍で大差をつけて勝った。
試合に負けたヤンチャくれ坊主達は、本能的に大輝を避け、痩せているウンチク悠一に仕返しを企んだのだった。
目を腫らす前日、悠一が学校から帰る途中、市場を通り過ぎたところに、ヤンチャくれ坊主達が現れた。
「この前、試合始まる直前に、このケンカ俺が預かった、と言ったよな」
悠一は直ぐ
「その前に、ケンカは良くない、何も生まれないし、、、と説明したじゃん」と応戦した。
しかし、時既に遅し、で、ヤンチャくれ坊主の右ストレートは既に悠一の顔面を捉えていた。
そのシーンをクラスメートのみーちゃんは少し離れた場所でずっと見ていたのだった。
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