第14話 現場見学

レントは薬草の瓶を見ながら言う。

「ここの薬草、凄く多いなって思ってたけど、ミストが探している薬草の瓶だと軽くって、違う薬草の瓶だと、なぜか重く感じてさ」

「そう……?」

「不思議だよね。量だって同じくらいしか入ってないし、他に液剤に浸かってたり、発酵してたり、重しがしてあるわけでもないのに」

「そうね……。でも、発酵はしているものもあるかもね」

ミストは真面目な顔で言う。


「そうなの? どの薬草?」

「……冗談よ」

ミストは笑って言う。

「薬草で発行が必要なものはここに置いてないの。外の倉庫よ」

「ああ、ミストの父さんが運んでる薬草の中かな?」

「そうね」

「後で見てみたいな……」

「父さんに頼んでみて」

「ありがとう、ミスト!」

レントは笑顔でミストにお礼を言う。


「そういえば、僕も薬を作るところを見ていていい?」

「え?」

ミストはレントの思わぬ申し出に一瞬驚く。


「あ……、ダメ……だったかな……?」

「……良いけど」

「本当に!?」

「でも、集中してるから、話しかけないで」

「分かったよ」

レントは嬉しそうにミストの手つきを見ていた。


ミストは薬草の瓶から薬草を取り出す。

そして、それをすり鉢へと入れる。

他の瓶からもまた、別の薬草、そして乾燥している木の実を入れていく。

そして、それを擦り潰して合わせていく。


「うっ……」

レントは鼻がむずむずしてきた。

慌ててその場から離れた。


「へくしゅっ!」

レントはあえて離れた場所でくしゃみをした。

ミストは思わず手が止まる。

「……あ、言い忘れてた」


レントは少しすっきりしたかのような顔で戻る。

「ごめんね……、言い忘れていたけど、これ使って……」

ミストは申し訳なさそうにマスクを渡す。

「え?」

「薬のクズ、というか粉末にするから、どうしても粉みたいなのが舞うことがあって。少しだし、ずっと吸っているわけじゃないから特に大きな害はないんだけど……、それでも一応念のために、ね」

「ああ、そういうこと……、ありがとう」

レントはマスクを付けておくことにした。


ミストは再び薬をすり潰している。

ゴリゴリ、と鈍い音が部屋に響く。

そして、完全に粉末になったそれらを、包み紙へと分包していく。


「凄いなぁ……」

「こんな感じよ。私の作っている薬は」

「初めて見たよ」

レントは少し興奮している。


「ところでさ」

「何?」

「この木の実ってなんの木の実かな? さっきから気になっちゃって」

「ああ、これはベリーの木の実」

「そうだったの?」

「ええ、しっかり乾燥させているものだから」

「そうだったのか……。でも、それは市場にも売っている物と違うみたいだけど」

「ええ、そうね。これは薬用だもの」

ミストは含みのある言い方をする。


「生で食べたりできないのかな?」

「……本当はあまり良くないけど、一粒だけ特別にあげるわ」

ミストはレントに一粒木の実を渡す。


「クンクン……、うーん、そんなに匂いがしないな」

「まあね」

レントはその木の実を口に入れた。

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