第13話 手伝いスタッフ

翌朝。

ミストは依頼のリストを見て悩んでいた。

「どうしようかな……」

どこから捌いていくか、という段取りを考える必要もある。


「リストか?」

「うん……」

「そろそろアレルギーの薬が殺到するだろう?」

「うん……」

「なら、薬草を持ってこよう。少し多めにこっちへ置いておけば、夜に倉庫へ行くこともなくなるしな」

「そうだね……」


ミストは外の薬草の運搬を父に任せた。

「この薬をこれだけ作るとしたら……」

カタカタ、と計算機を打ち込む。

相変わらず、薬の代金は安くできる。

しかし、数が多い。

「うーん、時間もかかるなぁ……」


「手伝おっか?」

「え……?」

顔を上げると、そこにはなぜかいないはずの人物がいる。


「ど、どうして?」

「ああ、チラシを見て、困ってないかと思って手伝いに来たんだ」

「あ、ありがとう……、レント」

「何を手伝えばいい?」

「というか、なんでうちにいるの……?」

「あー、えっと……、実はさ……」


レントは少し歯切れが悪い。

「教えてくれないなら手伝ってもらいたくない……」

ミストはむくれて言う。

「ご、ごめんって! ちゃんと言うよ」


「今、ミストの父さんが帰って来てるからさ、昨日街で会った時に話を聞いて、手伝いに来る許しをもらっていたんだ」

「そうだったの……。でも、レントだって忙しいでしょう?」

「ううん、論文の提出が終わって、しばらく手が空いているんだ」

「じゃあ……、そういうことなら……」

「うん、気軽に言って」


だが、一つ疑問がある。

レントは薬草の事を分かるのか?


「ところでさ」

「うん……」

「僕、大して薬の事わかんないよ?」

「やっぱり……」

ミストは崩れ落ちるような気持ちになった。


「でも、手伝えることはあるかな?」

「……じゃあ、しばらくここで仕事するから、重い物を運んでもらえる……?」

「うん、任せて!」

ミストは可能な限りの手伝いを指示する。


「えっと、ここに青いテープが張ってあるこの薬と、オレンジのテープが張ってあるこの薬を持ってきてもらって良い?」

「うん、このつづりの薬草だね?」

「そう……、お願い」

「任せてよ」


レントはメモを片手に薬を探す。

「え、ええっと……?」

紛らわしい名前の薬が多い。

「ミストたちはこれを全部理解しているの……!?」

しかも、困ったことに青いテープとオレンジのテープでも、似たような名前の薬がある。


「両方持って行って、違う方を戻しに来よう」

だが、レントは気付いた。

なぜか、ミストの指定した薬と合っている方の瓶は不思議と軽く持ち上がること。

反対に、ミストの指定した薬と違う場合、同じくらいしか入っていない薬瓶でも重くて動くのが困難になることに。


「凄い……。これなら、何とか持って行けそうだ」

レントは少し嬉しい気持ちになりながら、ミストの元に薬草の瓶を持っていく。


「ミスト、これだよね?」

「そう! ありがとう……」

ミストはほんのりと頬が赤くなりつつ、笑顔で答えた。

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