第8話 救助
ガタガタと倉庫が揺れる。
「ひぇっ……!」
ミストは怖くなって震える。
「どうしたんだ?」
そこにいたのは……。
「と……、父さん……」
「挟まれたのか……。じっとしていろよ」
父は慎重に袋を退けていく。
「動けるか?」
「うん……」
ミストは慎重に足を引き、ゆっくり立ち上がる。
「でも、父さん……、いつ帰ってきたの?」
「さっきだ」
「え? 話では昼間って……」
「思ったより仕事が早く終わってな。何となく早く戻ろうと思って最終便に飛び乗ったら、こんなトラブルに、ってとこだ」
「そうだったの……。でも、ありがとう……」
「とりあえず、手当てが先だな」
ミストは少し足を引き摺りながらも歩いて部屋に戻る。
父はそんなミストの後を追って部屋の中に入る。
「腕の傷は大したことないな。すぐ治るだろう」
「うん……」
「足は、少しの間安静にした方が良いだろう。触ったところ、折れてはいないようだが……、念のため、診察はしてもらっておいた方が良い」
「うん……。でも、薬の配達が……」
「大丈夫だ。安静にしていなさい」
ミストは不安そうにうつむいた。
「少しの間、仕事も休めそうだからその間は配達は任せておきなさい」
「ありがとう……」
ミストは安堵する。
安堵したと同時に、ぽろぽろと涙がこぼれる。
「泣くんじゃない」
父は苦笑いしながら、ティッシュを手渡す。
「だって……」
「不安になるのも分かる」
ポンポンと頭を撫でながら、父はミストを落ち着かせた。
ミストは作りかけの薬の存在を思い出す。
「あ……そういえば……」
「ああ、あれか。作りかけの」
「うん……」
「作っておいた」
父も薬師なのだ。
当然のように、作りかけの薬から完成の薬を想像できたようだ。
「薬草のエグみで苦言をもらっただろう?」
「うぅ……」
ミストは指摘に言葉が出ない。
「あれは扱いが難しい薬だ。主役の薬草が、元々エグみが強くて、俺たちでも苦戦をする代物でな。気にするな」
「そ、そうだったのね……」
「だが、ミストの調和の仕方は上手いと思った」
父は笑顔で褒める。
「さてと、そろそろ先に休むと良い」
「はい……。おやすみなさい……」
「ああ、お休み」
ミストはよたよたとしながらも、自室で眠る。
「思っていたよりも、しっかりしてきたか。一人でここを任せてみたが、帰ってくるたびに成長の跡がある」
父は満足げに頷く。
薬瓶を見て回ると、ある薬草だけが減っている。
「そろそろこの薬がはやるはずの時期だが……、それを取りに行って、倉庫で事故に遭ったということか……」
父はそう言って肩をすくめる。
「これ以外に使える物は……」
父はそう言って薬瓶を探す。
「うん、これを使える。明日からまた教えてやらねば」
ミストのメモを、父は興味深そうに見た。
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