第7話 事故

ミストはレントが見えなくなったのを確認して部屋に戻る。

そして、戸棚を開けた。

「びっくりした!」

「ご……ごめんなさい……」

「まさか、人が夜に来るとはな……」

「たまにあるけど……、大体急患だって話ばかり……。今日みたいなことはめったにないわ……」

「そうか」


青年はふとミストの肩に手を置く。

「ミスト、お前もこちら側に近い身だ」

「わかってる……」

ミストは少し俯いて言う。

「そろそろ戻るとしよう……」

「うん……、気を付けて」

ミストは青年が出て行くのを見送る。


「今日作る薬は……」

ミストはリストを見る。

「……多いけど、頑張らなきゃ」

ミストは薬の瓶を台に持ってくる。


すり鉢に薬瓶の中身を入れる。

「今回はこの木の実を混ぜて……」

ミストはてきぱきと薬を作っていく。


「これなら、前に言われた風味が少しはマシになっているはず……」

以前、顧客の一人に言われたのだ。

『ちょっと薬草のエグみがきつくてな……、確かに良薬ではあるんだが……』

「まさかあんな風に言われるとは思わなかった……」

ミストは苦笑いする。

さすがに薬だから、ちょっと味見というわけにもいかない。


「多分、あの薬がエグみを出しているはず……。中和はこれが良いって前に父さんが言っていたけど、少し他のも足して……」

ミストは薬瓶に手を伸ばす。

パンッ!

激しい音が部屋の中に響く。


「ケホッ……、ケホッ……」

ミストは思わず咳き込んだ。

というのも。


瓶を落として割ってしまった上に、ホコリが舞ってむせてしまったのである。

「ああ……、やっちゃった……」

瓶の破片を掃除する。

「瓶も割っちゃった……」

ミストは予備の材料を取りに倉庫となっている離れへ向かう。


だが……。

「よいしょ……。これと、あとこれも……」

薬の材料を取り出して、部屋に持って行こうとした途端。

ぐらり、と音がした。


「え……!?」

ミストは驚いて唖然とする。

薬の材料が倒れてくる。


「……あいったた」

ミストは薬の材料の崩落に巻き込まれた。

ポコッ、と橘の実の乾燥した物が頭に当たる。

「うー……、ここも掃除しなきゃ……あ、あれ……?」

ミストはさらに困ったことが起きた。


「あ、足が……抜けない……!」

がっちりと左足がハマってしまった……。

さらに、腕も変な感じがする。

「腕……ケガしてた……! どうしよう」

ミストは思わず顔面蒼白になる。


身動きが取れないミストは、一度考える。

「ここを退ければ……」

右足は自由だから、右足と腕で薬の麻袋を一つ退ける。

「朝になっちゃう……」

ミストはさすがに焦り始める。


「誰か……助けて……」

ミストは思わず声を震わせた。

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