第2話 秘密の訪問者

髪を結っていたリボンを外したミストは、白衣を着て紙をめくる。

「今日はこれとこれ……。来週あたりには、この材料を買いに行かないと……」

ミストは薬瓶からすり鉢へと乾燥したハーブを入れる。

そして、完走した堅い木の実をいくつか入れる。


ゴリゴリと鈍い音を立て、ハーブや乾燥した木の実などをすりつぶし、混ぜ合わせていく。

「今日は作る薬も少なくてよかった……」

ミストはそう言いながら、混ぜ合わせたものを包み紙へと移す。

この薬は、明日街へと持って行くのである。


彼女の仕事は薬師やくし

自然由来の薬を作ることを生業としているのである。

薬師はこの街とこの森では、ミストとミストの父の二人である。

ミストの父は、街の薬局で働いているが、忙しいのか森の家には戻ってくることは少ない。


「そういえば、明後日は父さんも帰ってくる……」

ミストは少し嬉しそうに窓を見た。

窓から見た空は、プラネタリウムのようにキラキラと輝いている。


「それにしても、レントが帰って来てたのは驚いた……」

レントは今何の仕事をしているか、聞いてみればよかったかもしれない……。

密かにそんな思いを持ちつつ、ミストは仕事場を片付け始めた。


「ミストー」

「?」

ミストは窓の外を見た。


そこにいたのは一人の子ども。

「またケガをしたの?」

ミストは困ったように言う。

「違うよ。例のあれ、持ってきたからさ」

「ありがとう。今開けるね……」

ミストはそっと戸を開けた。


「いつ見ても、殺風景だな」

「うん……、そうだね」

「んじゃ、これはどこに置いとけばいい?」

「じゃあ、ここに……」

「はいよっと!」

子どもは机の上に麻袋を置く。


「ミスト」

「大丈夫……、皆には言ってないから」

「ありがと」

子どもはそう言って笑顔を見せる。

「んじゃ、お代はいつも通り、ってことで」

「うん……」

ミストはそう言って笑顔で頷く。


子どもはミストの淹れたお茶を飲み、出された茶菓子を食べて帰っていく。

ミストは窓からその様子を見ていた。


「……今日は、ちょっと疲れちゃったな」

ミストはそう言うと、ベッドに横たわる。

「休もう……、ちょっとだけ……」

ミストはそう言って目を閉じた。


窓から明るい光が差し込んだ。

「……うん……? あ、朝になっちゃった……」

ミストはそう言って、伸びをして体を起こす。

「シャワーだけ浴びないと」

ミストは白衣を脱いで椅子に掛け、着替えをもってシャワールームへと駆け込んだ。


「今日は昨日の薬を渡しに行ったら、巡回の予約している人たちに会いに行くだけだったよね……。でも、市場でパンを買わないと」

ミストはシャワーを浴びながら、今日の行動の段取りを再確認する。


「くるみが入ったパンがあれば良いな……」

ミストはくるみが入ったパンが大好きだ。

それにバターを乗せて食べるのが特に好きである。

「それじゃなくても……、市場のパンは美味しいし……」


ミストはシャワーを上がって服を着替える。

そして、リボンで髪を結う。

一息ついて、温かい紅茶を口にする。


「……行こう」

ミストは肩掛けバッグに薬とペン、メモ、財布を入れて、家を出発した。

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