第59話 波乱だらけのアイリさんとの登校
「ふー、今日は何事もないといいけ——」「あっ、おはようございまス。待ってましタ」
「本当に実行したんですか!?」
色々とありすぎた新学期初日を終えた、次の日の朝俺の家の前には、昨日とは別人かと見紛うほど容姿を変えたアイリさん立っているのだった。
*
「いやー、全然出てこなかっタのでもう行ってしまったのかと不安になってしまいましたヨ。案外、ギリギリの時間に出るんですネ」
アイリさんは自分の容姿については一切言及することなく、俺にそんなことを言うと軽く笑っている。朝から元気な人だ。
「ま、まぁ、自分は話し相手いないもんで早く行っても悲しくなるだけなので...というか、それよりも問題はその髪ですよ!」
俺はアイリさんの美しい銀髪を指差しながら、声を張り上げた。そう、アイリさんの容姿は最早昨日とは別人とも思えるほど。その理由は艶やかに腰まで伸びていたはずのロングが、肩ほどまでしかないショートへと変貌を遂げていることにあった。
「? ...いや、昨日赤田くんがショートの方がイイって言ってましたシ」
「確かに言いましたけどっ。いや、まさかあの一言で本当に切ってくるとは思ってませんでしたから」
キョトンと俺がなにを言いたいのかすら分からない様子のアイリさんに俺は、全力でツッコミを入れる。なんか、昨日の時点で若干感じつつあったけど...この人、天然か?
「アドバイスは聞くだけじゃ意味ないンですよ? 実践してこそ真の価値を得られる、ト昔の偉い人が言ってたらイイですよネ〜」
「まさかのそこで仮定形!? なんか、一気に信頼感消えましたけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だったらイイですよネ〜」
「頼りないっ」
「フフッ」
確信した。くっ、この感じどうやら天然とかではなく俺をからかっているだけだこの人。
案外性格悪いと情報を追加しておかないと。
「というか、その...なんでわざわざ俺なんか待っててくれたんですか?」
「....はぁ」
そしてそんなことを話しながら歩いていた俺は朝からもう一つずっと気になっていたことを口にした。...が、その途端にアイリはどこか呆れたかのようなため息をついた。
「そんなの私と赤田くんが友人だからに決まっているデショウ?」
「確かにそうかもしれないですけど、それなら普通に学校に行ってから話したり会えばいいんじゃ——」
「友人は朝一緒に登校しないト縛りによって両方が爆死してシマイます」
「すいませーん、今からでも友人を解約する方法ないですか?」
「なんと酷いことヲ!?」
あまりにリスクが膨大すぎるんですけど!? そもそもなんで友人になるだけで縛りが発生するんだ、おかしすぎるだろ。
「でも、それを差し引いても友人になることは価値があるそうは思いマセンカ?」
「だったら、知人で充分ですよ! というか、なんでナチュラルに心読んでるんですかっ」
「これが友人の盟約を結ぶことにヨッテ得られる恩恵..」
「なんか、俺とアイリだけ黒魔術とかで友人の手続きしてません?」
「まぁ、それは冗談で赤田くんがただただ口に出してるだけなんデスが...」
ちょっと、それっぽい乙なツッコミが出来たなと思った俺であったがアイリさんの続く言葉にあえなく撃沈する。埋まりたい。本当に穴があったら埋まりたいやつです、これ。
なんなら、自主的に掘って埋まりたい。
なにが黒魔術だ。アホなのか、俺?
「まぁ、まぁ、そんなに自分を責めないデくだサイ。もしも、本当に限界なら私モ掘るの手伝ってあげマスから」
「今すぐにでもお願いします」
「...困りましたネェ」
またもや、ナチュラルに声が漏れていたことを指摘された俺はあまりの恥ずかしさに居たたまれなくなり、全力でそうお願いするのだった。
本当にマンホールでもなんでもいいから埋まりたい。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
次回「いや、そりゃあ突っ込まれるよねぇ...」
良かったら星や応援お願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます