第51話 膨らむほっぺと銀髪美少女
「本当に久しぶりですネ!」
「えっと、確か...アイリさんでしたっけ? もし、違ってたらすいません」
俺と花凛さんに元気よく話しかけくる銀髪美少女にやや気圧されながらも、俺はなんとか数ヶ月前の記憶をひねり出す。...多分、これで合ってるはずだけど。
「っ!? 名前、覚えてくれてマシタノ?」
「い、いや、大分印象的な出会いでしたから」
心底驚いた様子のアイリさんは更に前のめりになりながら、俺へと迫ってくる。というか、アレだな。今気がついたけどこの人の水着、花凛さんと比べて露出が多すぎて目のやり場に困るな。
「そうですカ! 私もアナタの事は鮮明に覚えてますヨ」
「あ、ありがとうございます」
「むぅ...」
しかし、アイリさんはそんなことお構いなしといった様子で前のめりな姿勢のまま、俺にそんなことを言ってくる。...そういや、前に女学校の制服着てたし距離感とかよく分かってない可能性あるな。
しかし、その一方で何故か花凛さんはどこか不満そうに頰を膨らませると此方を軽く睨んでいた。
「? 花凛さんどうしました?」
「...なんでもないよ」
俺が不思議に思って尋ねてみるが花凛さんは俺から顔を背けると合わせてくれない。
「というか、やっぱリお2人は付き合っておられたんですネ。まぁ、このアイリ当然分かっていましたガ」
「いや、付き合ってないですよ!」
すると俺と花凛さんの様子を見ていたアイリさんがウンウンと頷きながらそんなことを言うので俺は慌てて否定する。俺なんかと花凛さんが付き合ってるとか普通に花凛さんに失礼だからな。
「いや、それは無理があると思いますケド...」
「いや、本当に違いますから。ね、そうですよね。花凛さん」
「...」
「? 花凛さん?」
しかし、アイリさんは尚も納得していないようなので俺が花凛さんにも同意を求めるが返事が返ってこない。...もしかして、俺さっきよほど花凛さんの気に触れるような行動をしてしまったのではなかろうか?
「...違う」
「マジですか...そんなことあるンデスネ。絶対、付き合っているものとばかり...恋愛って難しいデス」
そんなことを俺が考えていると花凛さんは相変わらずこちらへと顔は向けないまま、ポツリとそう漏らす。そしてアイリさんはかなり衝撃を受けたような顔で、そんなことを言う。どうやら分かってもらえたようでなによりだ。
....というのに、何故か花凛さんからは誤解が解けて嬉しそうな様子はない。本当にどうしたのだろうか。
「そういえば、アイリさんは誰と来たんですか?」
しかし、このまま沈黙が続くのは気まずいと思った俺はなんとかアイリさんに話題を振ってみる。
「私は...学校の友達と来ましタ。これが最後の思い出ですかラ」
「最後の思い出...」
アイリさんから漏れたそんな言葉に俺は反応する。そう言えば年は聞いてなかったからな。もしかすると、アイリさんは3年生でこれが最後の友達との旅行と行った感じなのだろうか。
発言を加味するとこの可能性がかなり高そうだけど...。
「はい、だからこそ思いっきり楽しんでルンデス!」
「それでその友達の方は大丈夫なんですか?」
「...アッ」
「えっ?」
俺の言葉に大きく反応しガッツポーズをしながらそんなことを言うアイリさんに、俺は素直に疑問に思ったことを問いかけてみるとアイリさんは突然糸の切れたマリオネットのように固まってしまった。
「そ、それじゃア、私はこれで。久々に会えて嬉しかったデス。では、また今度」
「あっ、はい」
次の瞬間、アイリは酷く慌てた様子でそんなことを言いながらあっという間に走り去っていってしまった。また今度ってなに? とは一瞬思ったものの、俺は慌てていたからだろうと自分の中で結論づけた。
そんなわけで嵐のごとく現れ去っていったアイリさんだが、残された俺と花凛さんは...とても微妙な空気感に包まれていた。
いや、これどうしたらいいんだ!? なんて声をかけるのが正解なんだ? ...なんか花凛さん不機嫌っぽいんだよなぁ。
「その、さっきはなんかすいませんでした」
「い、いや、赤田くんが謝ることじゃないから気にしないで。というか、そもそも怒ってないし私」
俺が勇気を出して一言踏み出してみると花凛さんは慌てた様子で、そんなことを言う。良かった。いつもの花凛さんだ。—と言いたい俺だがまだ懸念点が残っていた。
「あ、あのー、なんで顔を向けてくれないんですか?」
そう、花凛さんは未だに俺から顔を背けたままなのである。
「...ごめん、それはしばらく無理かもっ」
しかし、花凛さんは俺の問いに答えることはなく顔を向けてくれないのだった。...やっぱり、なにか俺やらかしてしまったのではないのだろうか?
*
無理、無理、無理、無理、無理、絶対無理ーー!!!!
とても困った様子の赤田くんには悪かったがどうしても、私は私の今の顔を赤田くんに見せるわけにはいかなかった。
何故か? それは...ほっぺの膨らみが収まらないのだ。アイリさんと赤田くんが話しているところを見た後に、こうなることがなんの感情を意味するかは私でも分かっている。
だからこそ、赤田くんには見せられない。
いや、見せるわけにはいかないのだ。... いや、なんとなく赤田くんなら見ても気づかなそうだけどそういう問題ではないのだ。
なんか最早申し訳なさそうな顔すらしている赤田くんには非常にごめんだけどねっ。
そんなわけで私は心の中でそんな懺悔をしながらも、なんとかほっぺの膨らみを抑えようと自分自身と格闘するのだった。
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次回「彼氏ですぅ!?」
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追記
来週から修学旅行でして帰ってきたらテスト週間とアホみたいな過密スケジュールなので今急いでストックを作っておりますが、間に合わなかったらちょくちょく投稿途切れることあるかも。すいません。なるべく頑張ります。
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