第44話 危機感
「か、神崎さん?」
「やっぱり町田さんじゃん。それに赤田君だし……本当にこれどういう組み合わせ?」
町田さんに神崎さんと呼ばれた茶髪が特徴的なショートカットの女の子が更にコチラへと近づいて来ると、目を丸くしながら尋ねて来る。
こ、これ、どうしたらいいんだ? 素直に答えていいのか、上手く誤魔化すのが正解か……。
いや、でもここまで来て誤魔化すのは無理あるし……失敗したら誤解を招きそうだ。
どうやら花凛さんも同じことを思ったのか苦しい表情を見せながらコチラへと視線を送って来た。
「あー、別にクラスに広めたりしないし大丈夫よ? ただ単純にアタシ個人として気になっただけだし。赤田君と町田さんって正反対な印象だったからさ」
俺と花凛さんがどう答えていいかわからず、固まっているとそれを見かねたのか神崎さんがそう声をかけてくれる。
見た目が若干ギャルっぽいので俺としてはやや苦手な印象だったのだが、本当なら話の分かる人なのかもしれない。
というか……。
「神崎さんは俺のこと不快に思わないんですか?」
恐らく普通のクラスメイトにこの場を見られたら「なんで赤田?」「こんな奴と?」みたいな言葉が出てくると考えていた俺としては神崎さんからそう言った言葉が一切出てこないので、恐る恐る尋ねて見ることにする。
「なんで? アタシ別に赤田に嫌なことされた記憶ないけど?」
「いや、そうじゃなくて俺の噂とか…」
神崎さんが心底不思議そうな顔をして尋ねて来るので俺は逆に戸惑いながらも、それを口にした。
「ん? ただの噂じゃんね?」
しかし、神崎さんは変わらず不思議そうな顔をして真顔で聞き返して来た。
「それに本当だったとしても噂に尾ひれがつくのは当たり前だしさ、別に今更中学時代のこと気にしてもねって感じ。そもそもアタシ自身嫌な経験あって噂自体好きじゃないし」
「な、なるほど」
神崎さんはどうやら噂関係をそこまで信じていないタイプらしい。どこかサバサバとした雰囲気も感じ取れる。
「ホッ」
恐らく町田さんもそこまで親交が深いわけでもないと思われるが今の言葉を聞いてあからさまにそんな声を上げる。
分かりやすぎるって……可愛いけど。まぁ、多分俺がボロカス言われなくて喜んでくれてるんだろうけど。
それでもリアクションが分かりやすぎる……いや、可愛いんだけどね!?
「えっ、というか付き合ってる?」
「ませんっ」
そんな様子を見ていた神崎さんが真顔でそんなことを言うので俺は慌てて否定を、花凛さんも必死に首を横にブンブンと振っていた。
噂を広めないとは言えこのまま勘違いされるのはマズイので俺は神崎さんに軽く関係を説明するのだった。
*
「えっ、やっぱり付き合ってるよね?」
「だから違いますって」
一応、俺と花凛さんの関係の説明は終わった……終わったのだが——。
話を聞いて尚神崎さんは付き合っていると思っているらしい。
「えっと……バイト帰りはいつも町田さんの家に赤田君は寄って、シフトも毎回同じ?」
「そうですけど……」
「やっぱり付き合ってるくね?」
「なんでそうなるんですか!?」
何故だ。何故、分かって貰えないんだ。かなり話の通じる人だと思っていたのに……。
「ま、まぁ、本当によく分かんなけど付き合ってないわけね?」
「う、うん」
しかし、中々俺と花凛さんが折れずにいるとやがて神崎さんは諦めたように手を上に上げると、そう口にした。それに対し花凛さんも久しぶりに声を出す。
「まぁ、それはいいとしてさ……危機感なさすぎじゃね? これ、私じゃなかったら割と詰んでるよね?」
「「うっ」」
ここで神崎さんから正論ブローを食らいダメージを受ける俺と花凛さん。この点に感じではなにも訂正出来るところがない。
正直、神崎さんタイプの人じゃなかったら噂が一瞬で広まっていただろうし……気を引き締めていかないと。
こんなんじゃ、花凛さんに迷惑がかかっちゃうし。
「あんまり時間とらせるのもなんだしじゃあね。アタシも予定あるし。じゃっ、あっあと学校とかでもよろしく!」
俺と花凛さんがお互いに色々と考えを巡らせえいると神崎さんが腕時計を見た途端、早口にそうまくし立てると返事をする間もなく去って行ってしまった。
「……気をつけないとだね」
「そうですね」
神崎さんがいってしまってしばらくした後、花凛さんがボソリと漏らした言葉に俺はそう答える。
神崎さんにも言われたしな……。本当に気をつけないと。
俺は改めて当たり前のことを意識することを誓うのだった。最悪は花凛さんに迷惑をかけることだからな。
しかし、花凛さんは何故かそんなことを考えている俺のことをジッーと見つめるのだった。
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次回「開始」
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