第43話 夏だ! 休みだ! ???だ!


「えー、1学期も終わりを迎え夏休みを終えると君達は勝負の2学期が始まるわけですが、私としては夏休みからが本番だと考えおりましてここで実力をつけられる人が大学入試でも——」


 1学期も今日で終わりを迎え、終業式では夏を目の前に控え期待を募らせる若者達には一切意味のない校長による演説が行われていた。ある種の恒例行事である。

 正直、これが3年生であったなら全員が真剣な顔をしていたであろうが俺達は2年生。


 殆どの人は聞き流しているであろう。

 いや、多分中には「よしっ、勉強やるぞ!」という人もいるだろうけど俺はガリ勉タイプではないからな。

 俺は勉強に関してはただいつもと同じようにこなすだけなので、特に夏休みで差をつけるとか高尚なことは考えていない。

 というかぶっちゃけそんなやる気でない。だって、それよりもバイトとかのが大変そうだもんな。……楽しそうでもあるけど。



 *



「さー、いよいよ本番だね」

「ですね」


 今日は終業式の為12時には終わった俺と花凛さんは一旦自宅に帰った後、バイトが始まる3時の1時間前に俺が花凛さんの家に訪れ一緒にバイトへと向かっていた。

 ちなみにこの行動はなーちゃんが最近俺が来ていないので寂しがってるとの情報を得て、行ったのである。

 当分は名古屋通いだから終わった後は疲れて寄るとか難しそうだしな。

 だから行きに寄って挨拶していく方向に変えたのである。


「にしても……夏だ! 休みだ! バイトだ! みたいな感じだよね」

「俺達明らかにバイトに比重置きすぎですよね」


 果たして休みとは? と言った感じだがこれには各々とある理由があるのでしょうがないのだ。とりあえずバイトを増やして稼がないといけないからな。


「他の子達は夏だ! 海だ! 海水浴だ! みたいな感じなんでしょうね」

「あ〜、羨ましいなぁ」


 俺が何気なくそんなことを口にすると花凛さんは心底と言った感じで感情を吐き出す。

 まぁ、実は俺は当然一緒に行く友達もないのでバイトがなくてもいかないのだがな。

 だからバイトがない場合、夏だ! ボッチだ! 映画だ! になるんだろうな。

 ……映画に関しては1人映画も案外悪くないよね。ラブロマンス系を除けばだけど。


「う〜、はっ! そうだっ」

「? どうしました?」


 俺がバイトがない時間の過ごし方を色々と考えていると、横を歩いていた花凛さんが突然大きな声を上げた。


「バイトがない日さ、どこかで海水浴行かない?」

「はい?」


 そして花凛さんが続けざまに放った言葉に脳内処理落が追いつかず、俺は思わず足を止めその場に固まる。


「い、いや、花凛さん多分色々誘われてますよね? バイトない日とかって時間ないんじゃ……」

「誘われてるはいるけど……別に断ればいいし? どう?」


 思わぬ提案に俺が動揺していると花凛さんは特に気にした様子もなくそう口にする。

 まさか雑談からこんな展開になるなんて考えてなかったから正直頭が回らない。


「ちょ、ちょっとだけ考えさせて貰っていいですか?」

「全然いい——」

「あれ? 町田さんに……確か赤田?くん。えっ、どういう組み合わせ!?」

「「えっ!?」」


 俺と花凛さんがそんな話をしている時であった、前方からよく通るそんな声が聞こえて来たのは。俺の名前も一応知っていることから多分クラスメイトだろ

 正直、夏休みということもあってか俺も花凛さんも大分気が抜けてしまっていたのかもしれない。

 まさかそれがこんな結果に繋がってしまうとは……。しかも前回とは違って今回はもう隠しようがない。


 一体、どうすれば……。




 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 次回「危機感」


 良かったら星や応援お願いします。



 では!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る