第40話 この気持ちはなんだろうpart2
「ここですよね?」
「そうですね」
終業式も近い土曜日、俺と花凛さんはとある場所に訪れていた。
普段は話を振ってくれる花凛さんだが今日は緊張の為かここまで来るまであまり口を開いていない。まぁ、俺も同じなので話を振られても対応出来ないのだが。
「じゃ、じゃあ開けるよ?」
「はい」
花凛さんが少し強張った顔をしながら目の前の扉に手をかける。俺も思わず息を呑みその瞬間を待つ。
「ほ、本当に開けるよ?」
「はい」
やはりかなり緊張しているようでドアから手を離すと息を吐く花凛さん。そしてその後、すぐに再び扉に手をかける。俺はまた息を呑みながらその瞬間を待つ。
ちなみにここまで来る途中に花凛さんが開けたいと言っていたので俺は任せることにしている。
「……ちょっ、ちょっとだけ休憩っ」
待つ。
「い、いざ
……待つ。
「ふぅ……大丈夫。初めてなんてこんなもんだし余裕、余裕。私なら出来るはず。勝負よ、花凛っ! ……あぅ、やっぱ無理ぃぃぃ」
「だ、大丈夫ですか!?」
扉の前でへたり込んでしまった花凛さんの元へと手を差し出す俺。花凛さんは少し涙目ながらも俺の手を掴み立ち上がる。
「あ、ありがとう。というかゴメンね。時間かかりすぎて」
「いえ、多分俺がやるともっと時間かかると思うので」
花凛さんはかなり申し訳なさそうな顔をしているが正直しょうがないことだと思う。
「う〜、でも全然開けれる気がしない。怖すぎる」
「それなら俺と一緒に……とかどうですか? ほら、俺も1人で開けるのは怖いですけど花凛さんと一緒ならなんとなく開けられる気がしますし」
さっきから花凛さんの様子を見ていた俺がそう提案をすると、花凛さんは少し驚いたように目をパチクリさせる。
あれ……もしかして俺変なこと言ってる?
「い、いや、そうじゃなくてね? そのー、赤田くんの方から一緒にとか提案してきてくれるのが珍しいなぁって思って……なんか、大分仲良くなれた感じがして嬉しかったというか」
「さっ、早く開けましょうかっ」
自然に笑みをこぼしながらそんなことを言う花凛さんを見た俺は数秒固まった後そう口にすると、目の前の扉に手をかける。
「あれ? なんか照れてる?」
「うっ」
しかし、俺の誤魔化しの行動は花凛さんにアッサリと見破られてしまう。
「赤田くんって、なんか隠したいこととかあると話題をすぐに逸らしがちだよね」
くっ、恐らく出会った最初の頃の花凛さんなら誤魔化せていたはずだが……ここに来て仲良くなった弊害がっ。弱点が露呈してるんだけど!?
「まっ、いいや。じゃあ、せーので開けようか?」
「そ、そうですね」
俺の焦り具合を見てかかなり余裕を取り戻した花凛さんがそう提案してくるので俺も頷く。
「「せーの」」
そして声を揃えて俺と花凛さんは一緒に扉を開けた。そして扉の先には……。
「君たちはたかが店に入るだけでどんだけかかってるんだい? ちなみに今までの会話、丸聞こえだったからね?」
呆れ顔をして立っている本城さんが立っているのだった。
*
「いや、君達が仲良いのは良いことだよ? でも、流石に緊張しすぎじゃない?」
「も、もうそれはいいじゃないですかっ」
「そ、そうですよ」
店の中に入って俺達を席に座らせた本城さんがニヤニヤしながらそんなことを言うので、俺と花凛さんはお互いに顔を赤くしながら必死に誤魔化す。
……だって、今日からこんなオシャレな所で働くって考えたら誰だって緊張するだろ。
「まっ、いいや。今日は本番前の説明だからな。気を引き締めて頑張っテコー」
「いや、そんなボー読みで言われましても」
言葉とは裏腹に全く頑張る気のない声に俺は思わずツッコミを入れる。
「いやぁ、だってさ今日は私が教えれないんだもん」
「それは……まぁ、本城さん店長だからしょうがないんじゃないですか?」
そう、今日は説明を受けるのだがその相手は目の前に立つ本城さんではない。何故なのかも言えば、本城さんはこんな感じではあるが店長であり今日は大事な交渉に行かなければならないのだ。
なので代わりに本城さんが本店舗から連れて来ていて、この第2店舗で夏休みだけ働く予定の先輩が教えるとのことなのだ。(昨日、本城さんがとても残念そうにしながらメッセージを送ってきた)
「まぁ、そうなんだけどさ……君達で遊ぶの面白いから残念だよ」
「最低な理由ですね」
完全に俺と花凛さんのことオモチャとして見てるだろ、この人。
「よしっ、今の内に町田ちゃんに触れとくか」
「絶対にやめて下さい」
「ちぇ、まっいいや。みーや入って来て」
手の指をワキワキと怪しく動かし花凛さんに近寄る本城さんの前に俺が立ち塞がる、
本城さんも本気でしようとしていたわけではないようで軽く諦めると、カウンターの方へとそんな声をかける。
「はぁ、いつまで隠れていればいいのかと思ってましたよ」
「それはゴメンな、みーや」
「絶対に思ってないですよね?」
するとカウンターからひょこっと少し不満顔をした可愛らしい雰囲気を見にまとった、黒髪セミロングの女性が姿を現した。
この人が教えてくれる先輩なのだろう。確か
「今日はお願いします、矢吹先輩っ」
「お、お願いします」
「えっ、可愛い。2人とも可愛いんだけどっ」
「しっかりするんだ、さーや先輩」
俺と花凛さんが立ち上がって挨拶をして頭を下げると、慌てたような様子を見せる矢吹先輩と冷静に返す本城さん。
いや、本城さんまで先輩呼びする必要は……とは思ったがこの人ことだし遊んでるだけだな、これ。
「とりあえずよろしくねっ。……順一くんに花凛ちゃん」
「「は、はい」」
俺達と緊張しながらも声を出す。
「えーと、今日君達に説明をする矢吹 沙耶華って言います。確か、夏休み入ったら基本は順一くんの面倒を見ることになるはず……ですよね?」
本城さんに確認をとる沙耶華さん。ちなみにこれに関しては初耳である。
「うん、そうだぞ。赤田くんはコーヒーを淹れるのが希望らしいからな、そこはさーやにお任せってわけだ」
「本城店長のネタが古いのはさて置いて、そんなわけでよろしく。特に順一くん」
「「は、はいっ」」
俺と花凛さんはこれまた緊張しながらもなんとか返す。ちなみに何故か花凛さんの顔色は少し悪いように感じる。気のせいか?
「じゃあ、私のことは沙耶華先輩でよろしくね。特に赤田くん。なんか君、中々人のこと下の名前で呼ばなそうだし。まぁ、さーや先輩でもいいけどね」
「わ、分かりました。沙耶華先輩」
俺に目を向け軽くそんなことを言う沙耶華先輩。そう言われると矢吹先輩と呼ぶわけにもいかないので、俺は大人しく従うことにする。
のだが……。
「赤田くん、沙耶華先輩のことはこんな早く下の名前で呼ぶんだ。ふーん」
「ど、どうしたですか?」
どこはかとなく不満げな花凛さんが横にはいた。
「いや、なんでもないんだけどね……なんだろう、自分でも分かんないや」
「そ、そうなんですね」
「へぇ」
焦っている俺と花凛さんがそんなことを話していると、そんな様子を見ていた沙耶華先輩が面白いものを見たと言わんばかりに笑っていた。
「なんか本城店長が面白い2人って言ってた意味が分かった気がしましたよ。これは両方鈍感なパターンですね」
「そうだろう。そうだろう」
そしね、何故か本城さんと沙耶華先輩はお互いにウンウンと頷き合う。俺と花凛さんは思わず会話を止めお互いに顔を見合わせ、首を傾げるのだった。
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次回「花凛さん?」
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