第39話 実は
「あ、あのー大丈夫ですか?」
「へっ!?」
完全に硬直してしまった花凛さんに俺が声をかけると少し抜けたような声を出す花凛さん。なるほど、相当本城さんに恐怖心を——。
「そ、そうじゃなくてね? あのーなんというか……」
また口にしてたみたいだ。……どうも自分自身の手によってプライバシーを失くしていくインキャ代表赤田 順一が通ります。
っと、こんなこと考えてる場合じゃない。
花凛さんはなにかを言いにくそうにしているが、なにがあるのだろうか?
「いや、そのーなんというか同じなんだよね、私と赤田くん」
「?」
少し言葉に詰まりながらもそう告げる花凛さんだが俺は意味がイマイチ理解出来ず、脳内をハテナが駆け巡る。
「だからね、そのー元々夏休みのバイトのシフト私がある時必ず赤田くんもあるから……その私1人になる時がないんだよね」
「そうなんですか!?」
それは初耳だ、別に話し合って決めたわけじゃないからな。花凛さんがいる時に俺がいないことだって絶対にあるだろうとばかり思っていたが……。
「なんか、凄い奇跡ですねっ」
「う、うん、凄い奇跡ダヨネ」
俺は驚きすぎて少々テンション高めに声を上げるが花凛さんのリアクションは何故か微妙である。
なんか、こういう時絶対「奇跡的すぎるよねっ!」とか言いそうなイメージが強かったから意外だ。
それに目も逸らし気味だし……もしかしてこれ俺と一緒嫌なパターン!?
いや、花凛さんに限ってそんなことは——と思ったけど毎回同じ人がバイト行ったらいるのちょっと胃もたれするかもな。
いや、俺は花凛さんは話しやすいからならないけど、俺が会話を作り出すのは難しいからなぁ意外と負担になってるのかもしれない。
とはいえ俺が会話を作り出すのはエジソンさんが戦国武将になるくらいあり得ないことだしな。
ちょっと難易度が高すぎる。そもそも、発明大好きな人にどうやって戦場に行かせればいいんだ。
「まっ、まぁこの話はここまでにして別のことでも話しましょうか。2学期になったら色々行事ありますよね」
「そうっ! それ、本当に楽しみだよね! 3年生になったら受験とかで思いっきりは出来なそうだしやっぱりココで楽しんでおきたいってのはあるよね」
おっ、エジソンさんが戦国武将になったぞ! これはこれで奇跡。花凛さんもさっきより断然話しやすそうだし良いことだ。
……俺は多分クラス行事とか混ざれないのでワクワクはしないから、楽しそうな花凛さんの気持ちに共感出来ないのは心痛むけど。
それは以外は良いことだらけだ。
やっぱり花凛さんがイキイキしてるのを見ると俺も元気が出てくるし。
「? 赤田くん?」
「いや、なんでもないです。なんかいいなぁと思っただけですから」
「フフっ、やっぱりちょっとだけ変わってるよね赤田くんって」
「変わってるからインキャなんですけどね」
花凛さんが口に手を当て目を少し細めながらそんなことを言うので、俺も軽く笑いながらそう返す。なにか話さないと今のとかドキっとしそうだったしな。やっぱり俺には刺激が強すぎる。
「まさかの自虐ネタ!? というか、なんで少しだけ誇らしそうなの!?」
「花凛さんのおかげ……ですかね」
「あれ? なんかいい感じに言ってるけどこれって責任転嫁されてない?」
誤魔化す為に適当に喋りすぎたせいか珍しく花凛さんがツッコミに回っていたが……これはこれでありなのかもしれない。
多分なーちゃん辺りが見たら喜ぶであろう……困り顔花凛さん。
口には当然出来ないが可愛いことだけは確かだ。
にしても、改めて考えても俺と花凛さんのシフトの時間が被ってるの本当に奇跡すぎる。
一体どういう確率なんだ。最早エジソンさんが背中から羽を生やしで空を飛ぶくらいの確率であると言えるのでは?
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次回「この気持ちはなんだろうpart2」
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