第38話 大丈夫
「はぁ、とんでもないことになっちゃったね」
「ですね」
あの後、細かい説明を受けてから花凛さんが初コーヒー淹れをしてようやく終わりを迎えた今日のバイト。俺と花凛さんはこれまでにないほどに疲れ切っていた。
とにかく本城さんが強すぎるのだ。あの人、肺活量ありすぎるだろ。絶対、高校時代演劇か水泳入ってたタイプの人間だよ(偏見)。
「本城さん何故か私に迫ってくるし……」
「花凛さんは二重の意味でお疲れ様です」
花凛さんが遠い目をしながらそんなことを言うので俺も頷き同意を示す。多分ネタでやってるんだろうけど……迫力ありすぎるんよ、あの人。
あの身長かつ、クールな美人的な雰囲気凄いからな。見つめられると思わず縮めこまってしまいそうになる。
そんな人が変な動きしながら自分に迫ってくるわけだからな……今、冷静に考えてみると花凛さん視点地獄すぎない?
「でも、正直さ」
「はい」
「凄く楽しみではあるよね!」
無邪気な笑顔を見せながらテンション高くそんなことを言う花凛さんに俺は思わず固まる。
「ってあれ? 赤田くんはそうでもない感じ?」
「い、いやそうじゃないですけど」
花凛さんが不思議そうに尋ねて来るので俺は少ししどろもどろになる。……不意打ちの笑顔ズルすぎるんだけど。
「そのやっぱり怖さの方が強いと言いますか。本城さんが優秀な方なのは分かってます。コーヒーにかける情熱が凄いのも」
「うん、コーヒーに関しては信頼があるよねっ」
俺の言葉に元気よく首を縦にブンブンと振る花凛さん。本城さん……アンタ今までの行いのせいで花凛さんの中でコーヒーのみ凄い人みたくなってるけど、こんなんで大丈夫なのだろうか?
なんか急に本城さんにも不安感が湧いて来たな。いや、そうじゃなくて——。
「そ、その、だからこそ俺みたいなのがそこに立ち入っていいのかなって。それに、なにより高級な所ですから失敗が許されない感が強いと言いますか……」
「そっか、確かにそうかも」
俺の少しネガティブめいた言葉に軽く頷いた花凛さんは「でも……」と言葉を続ける。
「私は不安はあまりないかな、だって赤田くんと一緒だしね」
花凛さんは本当に何気ない無邪気な笑顔でそう口にした。……本当に凄い人だ。
「だからさ、きっと大丈夫だよ。何の根拠もないけどそんな感じする」
「そう、かもですね」
花凛さんの自然な笑みにつられて俺も思わず笑みをこぼしながらも、そう口にする。確かに実際にどうなるのかなんて分からない。
でも、きっと楽しいものであることも間違いない。俺は不安要素にばかり目がいってそんな当たり前なことに気がつけていなかった。
花凛さんには本当に感謝しかないな……でも、1つだけ1つだけ確認しておきたいことがある。
「バイトのシフトって完全に被ってたわけじゃないでしょうから、花凛さんはバイトあるけど俺はないみたいな日がありますけど……その時の本城さんの相手大丈夫ですか?」
「ぇ?」
花凛さんは俺の言葉に先程の笑みをなくし固まってしまうのだった。
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次回「実は……」
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