第32話 賭け
「英語の基本はSVこれは分かる?」
「はい」
「だからここの赤田くんが書いた文はそもそも順序が違うっていうこと……分かった?」
「分かり……ました?」
「何故、疑問形?」
勉強会もスタートとし、早速まずは町田さんが俺に俺の苦手な英語を教えてくれているのだが……難しい! 基本的に横文字を嫌う俺からすると鬼畜の所業といっても過言ではない。
過言ではないのだ!
「なんで反復法?」
「また、漏れてました!?」
直後、町田さんから冷静なツッコミが入り俺は慌ててそう尋ねる。
「うん、なんかもう……本当に気をつけた方がいいね」
すると町田さんはやや呆れたような顔をしながらそんなことを俺へと言う。どうやら、また丸聞こえだったらしい。もう、直る気がしないんだが?
「なんか赤田くん、いつもよりやる気なくない?」
そしてその後も勉強を教えて貰うがイマイチ理解することが出来ず、進まないでいると町田さんがそんな疑問を投げかけてくる。
「英語なので……」
「むぅ」
対する俺が正直に白状すると、町田さんは少し困ったような悔しいような顔をして口をとがらせると、シャーペンで
すると次の瞬間、なにかを思いついたようで顔を輝かせると顔を上げる。
ちょっと急すぎてビックリしたのは俺だけの秘密である。
「赤田くんってさ、英語が悪いだけで他は私に並ぶくらいテスト取れてるよね?」
「ま、まぁ」
町田さんがどこから情報を仕入れたかは定かではないが一応、中間では英語で30点を叩き出しながらも総合では学年12位を取っている。
まぁ、これに関しては友達がいないので遊ぶこともなく勉強に集中出来たおかげ(哀れなボッチパワー)なわけだが……。
問題は何故町田さんが突然そんなことを言い始めたのかと言うことだ。若干、少し悪そうな笑みを浮かべているのが不安だ。
いや、これはこれで小悪魔みたいで可愛いけどもっ。
「じゃあ、次回のテストの総合点で負けた方は勝った人の言うことを1つだけなんでも聞くって言うのはどう?」
「なっ」
とか思ってたら本当に小悪魔みたいなことを言ってきたな。というか、それ町田さんが有利すぎるだろ。
「赤田くん勝ち目ないみたいな顔してるけど英語ちゃんと取れればいい勝負出来るんだからね? 英語を真剣に頑張ればいいんだよ」
そして正論すぎて何も言い返せない。普段は割と隙だらけな言葉を言うことが多いのに、なんでこういう時だけ抜け目がないんだ。
「私もちゃんとジックリ見てあげるし勝機は全然あると思うよ? ……さて、なにを頼もうかなぁ」
「いや、勝機があるとか言いながらもう既に勝った後のこと考えるのやめて下さい! 俺も負ける気はないですからっ」
町田さんならそこまで大きなことは頼んでこなさそうだし、俺の負担とかも考えてくれるだろうが俺だってそれを甘んじて受け入れるほどではない。
それに勝った場合は逆に俺が言うことを聞いて貰えるのだからな。
「つまり……やるってことでいいんだよね?」
「はい」
俺は迷いなく頷く。
「負けないからねっ」
俺の前で気合いを入れ直すような仕草をとる町田さんに対し、俺も自分自分の頰を軽く叩き気合いを入れる。
このやり取りがあった後の英語の学習はいつもより格段にはかどったのは言うまでもないだろう。
これは絶対に負けられない。
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次回「お互いに」
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