第30話 本日の知ってた、知ってた
「こ」
勉強を開始してしばらくした後、町田さんがプルプルと震えながらそんなことを口にした。……もう、続きを聞かなくてもなにを言いたいのか分かってしまうのが辛い所だ。
「ここじゃ勉強にならないっ!!」
「ですね」
というか、俺としては始める前から分かっていたことだがやはりそうなった。恐るべし、町田さん家!
町田ママは更にコスプレに力を入れ、町田パパはいつものように変な行動を繰り返し、なーちゃんは……なんか、うん。暴走してた。
当然そんな状況で勉強など出来るはずもなく今に至るというわけだ。
いや、まぁそもそも俺たちが町田さん家のリビングで勉強をしようとしたこと自体が間違いな気がするけど。……そこは深く考えると自分自身を苦しませるだけなので考えないことにする。
「やっぱり違う部屋でやるしかないかぁ」
「それなら花凛の部屋でやればいいじゃないか? お前、いつもはそうしてるだろ?」
「えっ!? いや……」
町田さんがそう呟くとまたいつの間にか近くに来ていた町田パパがそんなことを言う。
ちなみにさっきから、町田パパはこんな調子でちょくちょく来てはなにか言って戻るという奇行を繰り返している。
いや、今回に限って言えばまともな意見を出しているが。それに対する町田さんのリアクションはいつもと違いあやふやなものだった。
「ほら、私の部屋上がるのは赤田くん嫌だろうし」
「? 別に嫌ではないですけど」
「き、汚い。部屋が汚いからきっと嫌な気分に……」
「? 花凛の部屋は綺麗じゃないか?」
「あぅ、いやそうじゃなくて……なんというか」
「「?」」
俺と町田パパが各々そう返すが町田さんの言いたいことがよく分からず、珍しく俺と町田パパが顔を見合わせるということになる。
普通にレアケースすぎる。
「と、とにかくダメっ! 分かった?」
「は、はい」
そしてしばらくなにかを考えていた町田さんが突然大きな声でそんなことを言うので、俺は頷くしかない。
理由は分からなし勢いで押された感半端ないけど……きっとなにかがダメなんだろう。
「しかし、そうなるといよいよ場所に困りましたね……」
「そ、そうだ! 赤田くんの家は? 1人暮らしなんでしょ!?」
俺がそう口にした途端町田さんが早口でそう、まくし立てる。
「い、いや、それこそ散らかってますし……」
当然、焦ったのは俺のほうである。というか、そもそも町田さん1人暮らしの男の家に上がるっていう危険性に気がついているのだろうか?
まぁ、俺は全くその気はないし度胸もないからいいが……ちょっと心配になった。
「赤田くんだからいいが……その無防備さはパパ心配」
町田パパも同様の思考に至ったらしくそんなことを口にした。
「そ、それでどうなの!?」
しかし、そんな俺と町田パパの心配には気がついていないようで町田さんは前のめりになりながらそう尋ねてくる。
よほど、町田さんの部屋に俺を上がらせたくないらしい。
「わ、分かりました」
しかし、普段から町田さんの家に上がらせて貰っている身である俺。前から上がってばかりなのは悪い気もしていたので受け入れることにする。
「密室で男女2人なんて……不純。ダメ」
しかし、なーちゃんが横で暗い顔をして呟いた言葉に俺は思わず俺はハッとする。
そうじゃん、完全な密室だ。誰と? 町田さんと。
気まずくなる予感しかしない。
「ま、町田さんやっぱり——」
「楽しみだなぁ、赤田くんの家」
断りを入れようとした俺だが町田さんは既に準備を始めており、ウキウキの笑顔でそんなことを口にする。
「そ、そうですか」
そしてそんな笑顔にやられてしまった俺は結局断りきることが出来ず、町田さんと俺の家へと向かうことになってしまうのだった。
ど、どうすればいいんだ、
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次回「密室?」
家庭内でゴタついててワンチャン1週間ほどおやすみ頂くかもです。そうなったらすいません。必ず復帰はします。はい。
良かったら星や応援お願いします。
では!
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