第24話 この気持ちはなんだろう
「えっと……つまり、2人は知り合いってこと?」
俺となーちゃんが手を取り合って喜んでいると、少し躊躇いがちに町田さんがそう尋ねてきた。そこで俺となーちゃんが同時に首を縦に振る。すると町田さんは笑顔を浮かべたまま停止した。
恐らく、相当驚いているのだろう。まぁ、気持ちは同じだから分かる。
俺もまさかなーちゃんが町田さんの妹なんて考えたこともなかったし、こんな所で出会えるとも思ってなかったからな。
「あ、赤田くんは奈々のことをあだ名で呼ぶくらい仲がいいの?」
「ま、まあ、色々ありまして……」
「奈々も私と話す時以上にハイテンションなの?」
「順兄、優しいし趣味が合うから……」
俺となーちゃんがそれぞれ答えると町田さんは黙り込んでしまった。
「うん、いや、なんなんだろうこの気持ち。2人が仲いいのは嬉しいんだけど……疎外感なのかなぁ、これ」
そして町田さんはそんなことを言い、首を傾げていた。
「花凛姉、ボッチ?」
「うん、やめて」
すると、横からなーちゃんからの口撃が。というか、なーちゃんまだその癖直ってなかったのか。
「なーちゃん、ダメでしょ」
「うっ、そうだった。ごめんね、花凛姉」
「謝ってくれるのはいいんだけどね、なんかもう複雑っ。 なんで、2人とも私以上に2人して仲いいの!?」
大分、先程から取り乱してしまっている町田さんがそう尋ねてくるが、返せる言葉は1つしかない。
「「色々ありまして(あって)……」」
「だからその色々を聞きたいんだけど!?」
「「あぁ!!」」
町田さんの意図することが分かった俺たちは、目で合図をとり合い説明を開始した。
「えっと、自分が中3の頃だっけ?」
「そう! 私が中1の頃だっだよね!」
「えっと、つまり2年前ね?」
俺となーちゃんが頷き合っていると町田さんが確認を取ってくるので、俺たちは頷きながら話を続ける。
「えっと、ここから電車でちょっと行った所に嵐山公園って所があって、自分は部活の自己練習の為に毎週土曜日にそこ行ってて」
「私もその近くに図書館があることもあってたまに寄ってたら出会って……それで、私が色々とあってちょっと泣いてたら順兄が話しかけて来てくれて」
「それでよく話をするようになって仲良くなったんだよね?」
「そうっ! 順兄ちゃんと覚えててくれたんだっ」
「なーちゃんこそ!」
「なるほど……うん、話は分かったんだけどなんか全然納得いかないや。本当になんなんだろう」
話は終わりを迎えたのだが町田さんはどこか納得いかないようで、顔を珍しくしかめていた。
「そもそもなんで赤田くんは奈々に対しては敬語じゃないの!?」
「いや、まぁ流石に歳下ですし敬語というのは……」
「それに奈々もさっきから私が見たことないくらいテンション高いし」
「久しぶりでつい嬉しかったから」
「あ〜、もう知らないっ」
と、ここで町田さんがそっぽを向いていじけてしまった。俺となーちゃんはなにがいけなかったのかとお互いに顔を見合わせるが、答えは分からない。
「あなたっ!」
「分かってる。このカメラの出番だ!いじけてる花凛とかレアケースすぎるからな」
ちなみに少し離れた所からはそんな声が聞こえてきた。やっぱり変な人達だと思うのは俺の勘違いではないと思う。
しかしその後、玲奈さんに淹れて貰ったお茶やパパさんが作ってくれたクッキーを食べながら色々話をしたりしたのだが……町田さんは最後まで機嫌を直してくれず、あまり話すことは出来なかったのだった。
「それでは、ここら辺で……」
「えー、順兄もう行っちゃうの!? 今日くらい泊まってよ」
時刻は10時に達しようとしており流石にマズイと判断した俺がそう切り出すと、なーちゃんは少し不満そうにそんなことを口にした。
話は変わるけど本当に上目遣いって卑怯だと思うんだよね。すっごい、断りにくい。
「え〜、順ちゃんもう行っちゃうの? 今日くらい泊まってよぉ」
「順ちゃんって誰ですか!?」
そして、それに悪ノリした町田パパが裏声ボイスを出しながら上目遣いでそんなことを言ってきた。本当になんなんだ、この人。
「っと、冗談はさて置き送ってくから車に乗ってくれ」
「い、いや、悪いですよ。ここからでしたら電車経由で帰れますし……」
「ダメだ。私が無理を行って来て貰ったんだ。これくらいはしないとな」
町田パパが折れる気配はない。恐らく、俺がお邪魔することを決めた時にはこのことを決めていたのだろう。破天荒で自由人に見えるが割と律儀な人だ。
ちゃんとクッキーも作ってくれたしな。ここで断るのもそれはそれで悪いし……。
「そういうことなら……お願いします」
「うむ、パパに任せとけ順ちゃん」
「だからそれやめてくれませんかねぇ!?」
うん、でもやっぱり変な人だわ。この人。そして俺はまだ未練タラタラといった様子を見せるなーちゃんに「また来るから」と約束を交わし、今日の所は諦めて貰い町田パパに連れられて町田家を出た。
「よしっと、さっ車に乗って——花凛?」
町田パパが車の鍵を開け俺が車の中へと入ろうとした時、家方面を眺めていた町田パパからそんな呟きが溢れた。
「はぁはぁ、これ」
そして俺も思わず振り返るとそこには息を切らし、ちっちゃな袋を携えた町田さんが立っていた。
俺はようやく声を聞けたことに少し喜びながらも袋を受け取る。これは一体なんなのだろうか? 食べ物というわけではなさそうだし。
「そ、その、ずっと渡せなかったけど東京スカイツリーのお土産コーナーで買ったの。私が買ったのとお揃いので……そ、その今日のことを赤田くんも覚えててくれたら嬉しいかなって」
俺が疑問に思っているとそれを察してくれたのか町田さんが、少し恥ずかしそうにしながらも説明してくれる。
しかし、その顔にはやはりやや不満げな顔も浮かんでいて……。やはり、アレなのだろうか?
確かに町田さん大分前から言ってたし……友達としてだもんな。勇気を出すならここしかないか。
「そ、その凄い嬉しいです。ありがとう、花凛さん」
「〜〜〜っっ!!!!?」
俺は少し噛みそうになりながらもそう言い終えると、町田パパの車へと乗り込む。
「は、早く車を出してください」
「それはいいんだが……この現場に居合わせた私は一体どうすればいいんだ?」
「なんでもいいですからっ」
まともに町田さんの顔を見れないからっ。これで正解? 正解なのかもよく分からない。だが、猛烈に恥ずかしいことだけは確かだ。
俺は尚もブツブツと呟く町田パパをなんとか説得し、車を出してもらうのだった。
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次回「総括!」
良かったら星や応援お願いします。ちなみに昨日は熱出て休んでました。すいませんッ。今日は夜もう一回投稿します。
では!
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