第25話 総括!
「にしても、君が奈々とも知り合いだったとはね……流石に驚いたなぁ」
慣れたハンドルさばきで車を走らせる町田パパが、唐突にそんなことを口にした。
いや、俺からすれば星型だったサングラスがハート型にいつの間にか変わっていることの方が驚きなわけだが。
「自分も驚きましたよ。まさかなーちゃ——奈々が町田さんの妹だったなんて……」
流石にそんなことを素直に口にするわけにはいかず、俺はそう返すことにする。ツッコミたい! ツッコミたいけど夜道だし危ないしな。
「ふむ……ムムッ!? まさか君、姉妹丼ぶりを狙って—」
「ませんよ。というか、そんなんじゃないですし」
俺はいつもよりやや音量を落としツッコミを入れることにする。流石に無視出来ない。というか、そんな言葉町田パパさんよく知ってたな!
「ラノベは大好きだぞ」
「当たり前のように心読まないでください」
すると、俺の疑問に答えるかのように町田パパはそう言うが……おかしい。俺、口にしてないんだけど。この人、変人なだけでなくなんらかの能力とか持ってないか?
「いや、君が口にして言ってただけなんだが?」
「……」
やめてっ、そんなハート型の目で見つめてこないでください! 恥ずかしいから。俺、今凄い恥ずかしいから。そう言えば俺焦ってるとたまに漏れるんだったな。
マジで気をつけないとこの先身を滅ぼすぞ、これ。いや、今もこの身を焼いているけど。
馬鹿みたいに恥かいてるけど。まだ、致命傷ではない。
「すまん、さっきから全部聞こえててパパちょっと気まずい」
「……」
ごめん、バリバリ致命傷だったわ。むしろ血を流しすぎて痛くないみたいな、死の間際みたいな状態だったみたいだ。
「まぁ、こんな素直な君だから花凛が旅行に行きたくなったのかもな」
町田パパは少しフォローを入れる為かそんなことを口にしてくれる。
「いや、君のことだ。勘違いしそうだから言っておくがこれは本心だからな?」
「えっ?」
「はぁ、花凛は男子と遊ぶことさえ今までなかったというのに。君のその鈍感さは改善が必要だな。今日見ててパパはそう思ったよ」
少しだけ呆れたような顔をしてそんなことを口にする町田パパに対し、俺はなにも言い返すことが出来ない。いや、相変わらずの「パパ」主張に関しては思う所がないわけではないが。
「あっ、ここら辺です」
「そうか」
そんなこんなでいつの間にか見覚えのある場所と着いていた俺は慌ててそう伝える。
町田パパは俺の言葉に頷くと道路の脇に車を止めた。
「今日は本当にお世話になりました」
俺が頭を下げて礼を言って車から降りようとすると町田パパによって止められた。
まだ、なにかあったのだろうか?
「スマホのLI◯Eだけ交換してくれないか?」
「へっ? あっ、はい」
少し「なぜ?」と思いながらも俺はスマホを取り出し町田パパをお友達として登録した。
「じゃあ、今後とも娘達を頼んだよ。今日はありがとう」
そしてキチンとそのことを確認した町田パパは柔かく微笑むと、そんなことを言いながら俺を降ろし車を出してあっという間に夜道へと消えて行ってしまうのだった。
何故、俺と交換してくれたのかは疑問だが今一番の疑問と言えば……町田パパのアイコンがきゃりーぱみゅ◯みゅだったことである。
ファンなのだろうか?
*
「ふぅ〜」
そしてようやく家へと到着した俺は玄関へとへたり込む。着いた瞬間に疲れがドカッと来た感じだ。今までそんなだったのに。
玄関の床で寝転がってしまい、しばらく起きることの出来なそうな俺は今日を軽く振り返ってみることにした。
今日は町田さんはいつにも増して可愛い格好だったよな。……やっぱり、東京だからオシャレをして来たということか?
クラスメイトに出くわして……危なかったけど町田さんのおかげでなんとか乗り切れたっけ?
その後は、本城さんに会って本場のコーヒーを飲ませて貰って……本当にアレは凄かったなぁ。俺もいつかアレくらい作れるようになりたいものだ。
そして東京スカイツリー。最近、あまり動いてなかったからからか足は限界だったけど、町田さんのあれだけ喜ぶ顔が見れたので満足だな。
大分、楽しんで貰えたし俺にしては上出来だろう。
それに少しだけ町田さんとまた仲良くなれたような気がする。俺が友達なんてものをまた作ってしまっていいのか悩むが、今までは後ろ向きだった気持ちも町田さんと接し始めてから大分変わったように感じる。
今の俺なら、前とは違った答えだって出せるのかもしれない。
それだけ俺の中で町田さんの存在は大きくなっているのだと思う。
まぁ、今日を通して思うことは色々あるし疲れたのも事実。明日は全力で休ませて貰うが……今日は楽しかった、これも変わることのない事実だろう。
振り返って、とてもハッピージャムジャムな1日だったと俺は改めて思うのだった。
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次回「なにかおかしい」
次回はようやく学校! ……バイトってなんなんでしょうね(遠い目)
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では!
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