第19話 夜景……


「な、なんで知ってるんですか?」


 一瞬、同じ学校の生徒か?と焦った俺であったが彼女の服装を見てそれはないなと思い直す。何故なら彼女が身につけている制服はウチの学校のものではない。

 確か東京の有名な女学校だった気がする。ニュースとかで何度か見た気が……。

 そんなわけで一先ずは安心といった所だがそうなると、何故知っているのかが余計に気になる。

 別に特別有名な学校でもないしな。


「ああ、えっトお母さんが見せてくれた写真の中にありましタ」

「えっ? あっ、あぁなるほど」


 なんてことないように答える彼女に俺は軽く頷く。多分、お母さんが卒業生ということなのだろう。確かこの手帳は創立以来変わってないはずだしな、おかしな点はない。

 つまり、どうやら知っていたのは完全な偶々というわけだ。


「そういうことなんですね」

「はい、そういうことデす」


 マズイ、俺の持つ話のネタはもう尽きてしまった。どこからかクソザコデッキとか聞こえて来そうだが普段話さないのに知るわけがない。あまり、完璧なボッチである俺を舐めないで頂きたいものだ。

 とか言う変なことを考えるくらいには気まずい。えっ、これなに話したらいいの?

 というか、銀髪美少女さんなんか黙り込んじゃったし。


「あっ! 赤田くん、ようやく見つけ——た?」


 そんな状態の中、後ろから町田さんの声が聞こえてたので振り返ってみると1人だけ時間停止でも食らったかのように固まっている町田さんがそこにはいた。


「あの子、アナタの連れ? スタンド攻撃でも受けてるノ?」


 俺と同じ感想を抱いたのかそんなことを口にする銀髪美少女さん。


「いや、連れというか後輩かつ同級生みたいな感じです」

「彼女じゃなイの?」

「俺みたいなのにあんな可愛い彼女が出来ると思いますか?」

「別に——」

「かわ、可愛い!?」


 銀髪美少女さんがなにかを言いかけた所で固まっていた町田さんが声を上げると、動き出した。


「えぇ、可愛いですけど……ですよね?」

「うン」


 俺が横の銀髪美少女さんに問いかけて見ると、同意見なのかコクリと頷いた。


「い、いや、えっ、あの……」


 対する町田さんの挙動はおかしい。なんでだ? 普通に言われ慣れているものだとばかり思っていたが……。


「そ、それよりその人誰?」


 これ以上は限界だったのか逃げるように視線を移した町田さんがそんなことを言う。


「たまたま具合が悪そうな所を発見して声をかけていた所なので、名前は——」

「本当に助けられましタ」


 知らない、と言おうとした所で俺の言葉を遮るように声を出した銀髪美少女さんは、腰を上げて立ち上がる。


「私の名前……アイリって言いまス。良かったら覚えておいてクださい」

「わ、分かりました」


 そしてそれと同時に俺の耳元で聞こえるか聞こえないかくらいの音量でそう囁いた。突然の耳の刺激に俺はをビクリとさせながらも、なんとかそう返すのだった。


「じゃあ、赤田……クん? 今日は本当に助かりマした」


 最後にそう言い残すと銀髪美少女さん—もとい、アイリさんはスタスタと歩いて行ってしまった。

 恐らく、俺と町田さんに配慮してくれたんだろう。いや、付き合ってないんだけど。


「ほ、本当にどういうこと!?」

「えっとですね……」


 でも、どうやら今はコッチを先にどうにかひないといけないみたいだ。



 *



「赤田くん……どうせなら夜景が見たかった所だよね」

「ですね」


 今、俺と町田さんがいるのは町全体を見渡せる東京スカイツリーの展望台。俺は町田さんが目をキラキラさせながらも、どこか残念そうな顔を覗かせて呟いた言葉に同意を示す。


 あの後俺はアイリさんについての詳しい説明を町田さんにすることになった。

 次に「えっ、これ本当にエレベーター!? でかくない!? なんか、これ絶対に違う装置だってっ」と中々展望台行きのエレベーターに乗ろうとしない町田さんを引っ張って乗せて、ようやくここまで辿り着くことが出来た。


「いや〜、本当にありがとうね? 絶対私に付き合ってここまで来てくれたでしょ?」

「いや、自分が来たかっただけです」


 ニコニコと笑いながら当たり前のように感謝を伝えてくる町田さんの陽のオーラにやられつつも、俺はなんとかそう返す。


「まぁ、赤田くんがそう言うなら一応はそう言うことにしておくね」


 どうやら誤魔化しきれてなかったらしい。


「にしてもアイリさん? が佐原高校知ってたの……本当に凄い偶然だね」

「そうですね」


 町田さんが何気なく出した単語に俺はやや反応しつつも大人しく頷いておく。去り際にワザワザ名前を教えてくれた彼女だが……多分もう会うことはないだろうな。

 なにせ、東京と愛知じゃ離れすぎている。


 もう少しだけ話したいことがあったからちょっぴり残念な気持ちだ。



 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 次回「お疲れ……」


 良かったら星や応援お願いします。投稿ペースが上がるかもです。


 では!


町田ちゃんイラスト↓


https://kakuyomu.jp/users/KATAIESUOKUOK/news/16817330653838354578

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