第5話 学校で……


 学校での俺の過ごし方はまさしく陰。基本的に誰かと話すこともなく、たまに挨拶をされれば頭を下げる程度。グループワークなどで必要にかられた時は話すことはあるが基本喋らない。

 というか、あの噂のこともあってかみんなは俺が話していると嫌そうな態度をとるので、不快な気分にさせないようになるべく無口で押し通っている。

 そんな感じなので放課の時間は割と暇だ。だって話す相手がいないわけだからな。まぁ、これに関しては勉強に回せるので悪くないなとも思っている。

 そんなわけで昼放課を迎えた俺は今日も1人ボッチ飯を食べていたのだが……。


 なんだろうか? いや、勘違いなのかもしれないが……遠くの俺から見てみても町田さんが明らかに挙動不審である。

 というか、今日一日そうなのだ。彼女の友達達も心配なようで何度も聞いていたが、本人は大丈夫の一点張り。

 俺としては、昨日のバイトのせいだと思っている。……その時は良くても割と後から疲労が来ることってあるからな。

 まぁ、町田さんは直接見たわけではないが体力も抜群にあるらしいので(体力テストの記録とかでみんな盛り上がってた) 、まぁ変な話かもしれないが。


 まぁ、俺には関係ない話か。別に俺は彼女と友達を名乗れるような存在ではないし、バイト以外では絡むこともない。

 そんな風に思った俺は、それ以上町田さんについて考えることを止めて再び弁当を食べ進める。


「あの……」

「ん?」


 今日のボッチ飯戦も終盤に差し掛かり、残るは至高のタコさんウインナーのみとなった時俺に誰かから声をかけられる。

 昼放課に話しかけられるなんて珍しいこともあるもんだ。いや、多分係とかの用事なのだろうが。

 俺はそんなことを思いつつも失礼にあたらないように素早く顔を上げる。


「こんにちわっ」

「ま、町田さん!?」


 しかし顔上げて視界に入って来たのは学年一の美少女町田さん。今日は珍しくツインテールといった髪型。(ちなみに彼女の髪型に関しては新聞部が記事を出していて、1番多いのはポニーテールらしい)


「な、なんの用事でし?」

「噛んでるよ?」


 俺は冷静を取り繕おうとするもあえなく撃沈。というかなんで!? どうゆうこと!?


「えっ、あの〜ね? ほら、赤田くんずっと1人っていうのもアレだしなにか話せないかなと思って……」


 俺が疑問符を頭いっぱいに浮かべていると町田さんは何かを感じ取ったようで、そう補足をしてくれる。

 いや、その気持ちは嬉しい。町田さんは確かに俺と仲良くしたいと言ってたしな。……ただの社交辞令だと思ってました。すいません。

 しかし、どうしたものか……クラスの連中からして見れば人と話して来なかった完全な陰キャな俺に、クラスのアイドル的存在の町田さんが突然話しかけに行っているのだ。

 町田さんは気がついてないかもだが視線と圧力がエゲツない。なんか、1つでも間違ったら消されてしまいそうな……そんな雰囲気。


「いや、あの気持ちは嬉しいんですがちょっと視線が気になるかなって……ほら、町田さんはいっぱいご友人いらっしゃいますし、それにバイトのことバレるかもですよ?」

「あっ」


 俺はなんとか言葉を捻り出し、なるべく町田さんを傷つけないように遠回しに意図を伝える。……町田さんのことだから絶対によかれと思ってこんな俺の為してくれたことだろうからな。

 それに昨日たまたま耳にした時、確か町田さんは友達にもバイトの話は教えていないようだった。その点から町田さんにとっても俺との接触はあまりいい話じゃない。


「そっか……ゴメンね」


 町田さんは俺の意図を汲み取ってくれたようで申し訳なさそうに顔を下げるとその場を去ろうとする。

 俺もこの件に関してはもう大丈夫だと思った——矢先である。


花凛かりんどうしたの?」


 そんな声が聞こえ町田さんが動きを止め、俺も固まることになる。この人、確か町田さんの中学の時からの親友とかなんとかって自己紹介で言ってた……柚木ゆずきさんだ。

 確かそうだったはず。

 印象的な金髪のショートヘアだったので覚えていたのだ。

 だが、これは少しマズイかもしれない。


「ゆ、柚木どうしてココに?」


 町田さんも柚木さんの登場には驚いたようでそんな声を上げる。


「いや、普通に誰と話してんのかなぁと思って——って、ゲッ。 コイツ赤田じゃん。なんでこんな奴と話してんの?」


 俺の顔を見るなりそんな声をあげる柚木さん。どうやら彼女は噂を知っているらしい。

 仕方ないことであるが俺は少し傷つく。それと同時に実際に「ゲッ」とか言う人いるんだ、と変な所で感心したりもしていた。


「こんな奴ってなに——」

「町田さん、町田さん」


 しかし町田さんはそうは思わなかったらしく彼女にしては珍しく怒り、柚木さんに言い返そうとしていたので慌てて止める。

 変に言い返せばバイトの件がバレてしまうかもしれない。俺にとっても町田さんにとってもそれは良くないことだ。


「へっ? なんで花凛が怒ってるの?」


 柚木さんは心底不思議そうな顔で町田さんに聞き返す。

 正直、俺がああ言われてしまうのは俺に原因があり仕方ないことだ。それに町田さんが反論をかました場合町田さんも巻き込んでしまう可能性がある。

 だからこそ俺は町田さんに目で訴えかける。


「……別に怒ってない。ちょっと気になっただけ」

「それならいいけどね」


 どうやら気持ちは通じたようで町田さんは俺にだけ見えるように舌を噛みながら、なんとか柚木さんにそう言ってくれる。……助かった。


「それじゃあ、改めて聞くけどなんでコイツなんかと話してたの?」


 しかし、柚木さんはそれだけでは納得いかなかったようで俺を指差しながら町田さんにそう投げかける。


「だからコイツなんかって——」

「お、俺が昨日落し物してたまたま拾ってくれたみたいで届けてくれたんです」


 町田さんがそう言いかけた所で俺は声を出し柚木さんに嘘を伝えることにする。

 なんか、町田さんの方から恨むような視線を感じるが……許して欲しい。


「はぁ? アンタに聞いてないんだけど? まぁ、でもそれなら納得ね」


 柚木さんは俺が答えたことが不満なのか明らかに態度を悪くしながらも、一応は頷いてくれる。というか、俺が嫌われているのはそうなのだが柚木さんは人一倍当たりが厳しい気がする。


「でも、だからって調子のんじゃないわよっ。花凛かりんはみんなに優しいから、アンタみたいなクズとも落し物ついでに話してくれただけっ! 勘違いすんなっ」


 柚木さんは怒鳴るように俺に向かってそう吐き捨てる。よほど俺は彼女に嫌われているらしい。


「ゆず___」

「分かってる」


 また、町田さんがなにかを言う前に俺は素早く答える。なんか、早押しクイズの気分だ。


「分かってるならいいわよ。じゃあ花凛かりんいこっか」

「…………」


 柚木さんがそう言うが町田さんは無視してこの場に残ろうとしているのを感じ取って、俺は慌てて再び視線を送る。


「うん」


 するとようやく頷いて柚木さんと共に去っていってくれた。いや、気持ちは嬉しいんだけどな。

 俺は複雑な思いを抱えながら柚木さんと共に歩いていく町田さんの背中を見送るのだった。


 なんか体験したことないくらい大変な昼放課だったな。
















補足:本作品は愛知県を舞台として作っておりす。その為、


昼休み→昼放課 休み時間→放課 授業終わった後→放課後


として使っております。ご理解のほどよろしくお願いします。




 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 次回「アイツは……」


 赤田くんの過去の話が少し出てきたり……。

 ちょっとイライラパートですいません。

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 では!







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