第4話


 「会いにきたって言うとるやろ?」


 「…えーーっと」



 会いに来た。


 …俺に?


 なんか悪いことしたっけ?


 まさか、夏樹の友達とか…?


 だとしても展開が急すぎる。


 初対面の相手には、礼儀ってもんをだな…



 「どちらさんですか?」



 聞こえたのか、聞こえてないのか、はっきりとはわからなかったが、女は大きなため息をついた。


 眉間にシワを寄せている。


 もしかしたら怒っているのかもしれない。


 仮に怒っているにしても、意味がわからないが。



 「単刀直入に言うが、あんたに用がある」



 まさか、喧嘩を売られてるのか?


 それだけはないと踏んでいたが、俄然その可能性が高くなってきた。



 「…用?」


 「すぐそこのグラウンドまで、一緒にきて」



 なんで?


 話があるんならここで済ませたほうが良くない?


 そもそもこの近くにグラウンドなんてあったか?


 見たことないけど。



 「…俺、なんかしました?」



 女はじろりとこちらを見つめ、返事らしい返事はしてくれなかった。


 いいから付いてきて


 その声に促され、仕方なくついていくことに。


 いや、途中で逃げ出そうかとも思ったが、逃げるにしても後味が悪すぎる。


 俺は何も悪いことはしていない。


 していないし、逃げる理由がない。


 話があるならあるで、一応聞いてやろうじゃないか。


 どうせ大したことにはならない…とは思う。

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