番外編7.一ノ瀬 凜空

俺の人生はいつだって平坦でつまらない。


その中で俺は、『人を意のままにする事』だけが楽しみだった。


『何言ってんの。堕ろすに決まってるでしょ』


俺はその時、それに賛同するつもりだった。


だけどふと、考えてしまった。


今を輝く女優と、俺の子供。

どうなるんだろう。


……まぁ、それはそれは可愛いだろうな。

禁断の恋的なのをさせられるかもしれない。


『ねぇ、』


その日の決断で俺は、『父親』というものになった。


『おとーしゃん!』

『……』


情は湧かなかった。

子供は嫌いだったから。

しかも……男だし。


もったいない。

これじゃ俺の劣化コピーだ。


『親権はあなたなんだからね』

『……分かってるよ』


彼女は金持ちだったから、養育費は気にしないで良かった。

だからこいつの世話は、その金にものを言わせて雇った奴らがしていた。

養子に出しても良かったけれど、……俺の遺伝子だ。

目に届く所で管理しておきたかった。


金ならあるんだし。


『子供が居るみたいなの』


何番目かの女が、ある日そう言った。

この女は貧乏で、いずれこうなるとは思ってたけど……めんどくさい。


……もう一回だけ。


もう一回だけ産ませて、男だったらもう辞めよう。

俺はそう思った。


『いちのせれいです』


2番目の子供は女で、みるみる成長して行った。

ロリコンの趣味はなかったけれど、このまま順調にいけばとうとう面白い事が出来そうだった。

そう……16歳くらいが良い。


『ただいま』


そして俺は、男のガキの出来た女優と籍を入れた。

理由は単純、安定して金が欲しかったから。


……オトすのは簡単だった。

元々、しばらく活動休止しても産んでくれるくらいには、俺に情があったんだから。


『……父さん?』


結婚して、子供とも一緒に暮らすようになってから、俺は初めてちゃんと子供の顔を見た。


……やっぱり劣化コピーだ。


見た目は上出来だけど……魅せる力が無い。

そんなんじゃ、俺のように女優を釣るなんて出来ない。


『……お前、不細工だな』

『えっ……』

『それ閉まっとけよ』

『……』


家に居る時間は暇で退屈だったので、その子供を歪めたりして遊んでいた。


『……』


すると、その子供はすぐに俺の言うことを聞くようになった。

言う事を聞いても褒めてはやらないが、その時は何も言わないでやるだけで、あっという間に素直になった。

……そんなある日、


『父さん、……僕、れいのモノになったから』


子供が言った。


……驚いた。

いつの間にれいのことを知ったんだろう。


『れい、お前は今日から俺のモノね』

『?……うん』

『れいも、誰かをモノにするんだよ』

『……分かった』


俺はあの日の事を思い出す。

まぁ良い、れいは俺のモノなんだから。


『お前らは子供だ!どこにも逃げられない!』


だから、絶対に逃がしてなんてやらない。

俺の思い通りの結果にならない事なんて、あっちゃいけないんだから。


なぁ?

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