ラレオ。
妻である葉月と出会ったのは、大学に入って随分と経ってからだった。
友人主催の男女での飲み会。それまで真面目に法律を守っているのもあったけど、一番は恥ずかしさと僕なんて、なんていう自信のなさからくる自虐私観もあって、それこそお酒が飲める年まで一度も参加はしなかった。
「三歳から飲んでるぜ、泡だけだけどな」なんて言う友人もいたけど、僕はどうにも気が乗らなかった。
ようやくそんな歳になり、気を遣ってくれたのか、大人数での飲み会じゃなくて、食事会としてくれた席で僕は一人の女性と知り合った。
美しい黒髪と綺麗な瞳、整った鼻筋と小さな唇。小さく笑う、その上品な所作。そして僕と同じように、初めてのお酒に戸惑うような、そんな仕草。
そんな彼女に見惚れて、緊張して飲み過ぎてしまった僕を、最後まで介抱してくれた。
情け無いけど、それが葉月との出会いで、それが僕の運命の始まりだった。
そこから僕らは順調に交際を重ね、緊張したプロポーズにも応えてくれて、ついに結婚した。
結婚してからは、妻を幸せにするべくひた走ってきたけど、ようやく大きなプロジェクトに関わることが出来たんだ。
葉月も喜んでくれて、僕らはお祝いしたんだ。
多分それはとても幸せな、夢見ていたような、新婚生活だったのだと思う。
◆
最近、葉月の様子がおかしかった。
「最近、元気ないけど…大丈夫か?」
久しぶりにベッドで一緒になっても、上を見上げては、ぼうっとしていた。
「…大丈夫ですよ。朔くんは心配性なんですから」
いつもはそう言った後、すぐに胸元に飛び込んで甘えてきたのに、それがない。そう伝えると、葉月は俯いた。
なんだろうと不安に思う。
「…実は少し太りすぎたかなとショックで…」
葉月はそう言って、僕の胸をそっと押して距離を取った。
「そんなことで…? い、いや、そんなことなんて言っちゃダメだよな…けど僕は葉月のスタイルがどんなに変わっても好きだよ」
そう言って葉月の首に手を通そうとした。
彼女は腕枕が好きだったから。
「えっ、あ、や、だ、駄目っ! す、少し、少し痩せますからっ! が、我慢してください! 今日は…その、またこっちでしますから…」
そういうのを期待して強請ったわけじゃないけど、彼女はそう受け止めて、ゴソゴソと布団の中に潜っていった。
「最近そう言ってたのは恥ずかしかったからか…」
「……はい」
「じゃ、じゃあお願いしようかな…?」
「…はい…」
こういう行為も、苦手だと嫌がっていたはずなのに、最近は率先してしてくれる。
これは喜ぶべきなんだろうか。
果南さんは、葉月にいろいろ教えたって言っていたけど…。
「…え、ええ、気持ちよくなってくださいね。ちゅ、れろ、んぶ」
何故かその葉月の声に、心が篭ってないように感じたのは、疲れてるせいかもしれない。
それに、彼女のこんな下品な音は、気持ちいいのに、何となく僕には不快な音だった。
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