間奏2

 魔女とある女性は、甘い紅茶が好きだった。

「美味しい……!」

「美味しいですわよね、ナラリア公国産のハーブティ。おかわりいかが?」

「ありがとう、カナリアさん。いただくわ」

 魔女は喜々として、目の前に座る淑やかな女性にハーブティを注いだ。

「……本当に、あなたのおかげで我が国は安泰です。あなたのその強力な呪力が、千万人以上の国民の命を守っているのですわ。いつもありがとうございます」

「そんな。こんな素敵な邸宅に住まわせていただいている私のほうよ、お礼が言いたいのは。そんなことより、アマリア姫、恋路のほうはどうなの?」

「え、あ、エドワード王子のこと?……今度来てくださることになってるの。闇の国に囚われていらっしゃる弟君のこともあって、中々忙しそうにされていらっしゃるのだけれど……なんだか悪いわ、と思ってしまうわ」

「あすこのご兄弟、とても仲睦まじいですものね……奪還作戦も中々思うように進んでいないようですわよね。でも、良かったじゃないですの。良いことは素直に喜んでいいと思いますわよ、私は」

 閑静な植物園に、足音が駆け込んできた。守衛の一人である。

「速報です、アマリア姫。ナラリア公国が闇の国震源の地震によって打撃を受け、城が崩壊したとのこと。救助活動は難航しており、スウィフテン国王やエドワード第一王子、その他の人々の安否は不明です」

「なんですって。すぐにナラリア公国の本丸行きの馬車を出して。30分以内に」

「はっ」

 守衛が下がっていく。カナリアは心配になってアマリア姫の表情を見た。凛とした覚悟、そして、堪えられた苦悶が滲んでいる。

「アマリア姫……」

「カナリア、少し家を空けるわ。その間、任せておける?」

「もちろんです」

 普段はおっとりした姫の、隠された一面に、カナリアは少し安堵した。これでこそアマリア姫である。胆力でいえば彼女のほうが優れている。私にはたまたま魔力があるというだけのこと。ああ、エドワード王子が無事ならいいけど! 彼女の悲しむ姿は見たくない。どうか無事でありますように……。

 祈りも虚しく、しばらくしてスウィフテン国王とエドワード第一王子の訃報が届いた。それからというもの、アマリア姫は笑わなくなった。

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