第9話
アレティアがドレシア帝国軍の一部を使ってフェルジャンヌ王国を奇襲しようとしていたことには気づいていた。
……僕とアレティアとアレスが居て、魔王に苦戦するわけがないのだ。
サクッと魔王を倒して、そのまま戦争の続きを行おうとしているアレティアの思惑を見通すなんてあまりにも簡単だ。
だからこそ、僕もフェルジャンヌ王国軍の一部をこちらへと密かに送っていた……。
だけど、僕は最初から戦争を続けるつもりなんてまるでなかった。
魔王を復活させるための方法はゲームで見て知っていたので、魔王が復活するタイミングと位置を自分で決め、アレティアのドレシア帝国軍へとぶつける。
こうすることでアレティアの出鼻を挫き、戦争を続けるなんてことが出来ないようにしたのだ。
「ぷへー」
僕に出し抜かれる形となったアレティアが横で不満げに頬を膨らませ、拗ねている。
「ねぇ、魔王を前にしているのにその態度はあまりにも余裕すぎない?」
完璧なタイミングで魔王のいる場所へとつき、そのまま魔王の右腕を斬り落として殺されそうになっていたガイちゃんを助けた僕は自分の横のアレティアへと苦言を呈する。
「私は魔王なんて相手にしていられないレベルで落ち込んでいるの!……あぁ、ノアに出し抜かれたぁ」
「この作戦はちょっと僕のズルみたいなところもあるし、そこまで気にしなくとも良いと思うけどね」
「それでもなんだよ!……ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ」
魔王を前にしながら全然関係ないこちらの話を続ける僕とアレティア。
「……っと」
そんな僕たちに業を煮やしたのか、魔王が不意打ち気味に僕へと牙を剥き、攻撃してくる。
「……っぶないな」
ギリギリのところで魔王の攻撃を避けた僕は不満げに言葉を漏らす。
「魔王ともあろうものが不意打ちなど……恥ずかしくないの?」
「何を言うか、人間……我を前にして雑談を行うなど殺して下さいと言っているようなものであろう?そんなつまらぬお願いをする人間に対してわざわざ我が前口上を告げる必要があるようには思えぬ」
「まぁ、それはそう」
僕は正論を告げる魔王の言葉を前に素直に頷いた。
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