第3話

 魔族の侵攻に対する人類の対応は早かった。

 ララティーナ並びにレース、ドレシア帝国軍人の高官が旗印となって人類の軍を率いて魔族の侵攻を食い止める。

 不自然までに完璧に整えられた補給に支えられる人類の軍勢は魔族の軍勢の攻勢を前にしても頑強に耐えて見せる。


「下々の民が必死こいて耐えている間に僕ら三人がサクッと魔王を倒してくるって寸法だね」

 

 魔法があり、個人が余裕で一騎当千を成し遂げるこの世界だと下手に兵士を集めて突撃させるよりも精鋭部隊を魔王にぶつける方が合理的であり、確実だ。


「争いを出来るだけ早く終わらせるよう……俺の持つ力を最大限活用してみせよう!」


「……私もノアも要らないじゃないかしら?アレス一人で十分だったりしない?」


「いや……さすがにアレスだけだと……いや、行けるか?」

 

 僕とアレティアはアレスの方へとちらりと視線を送る。


「ま、待て、二人とも。さすがに魔王討伐と言う大命を俺にだけ背負わせないでくれ」

 

 その視線を受けたアレスが困惑しながら声を上げる。


「えー、アレスなら案外いけると思うけどね?」


「プレッシャーに負ける……ここは確実に三人で強襲を仕掛けよう……な?」


「まぁ、もとよりそのつもりだし、そうしようか」


「そうね……ところで魔王城ってどれかしら?」


「……さぁ?」

 

 僕とアレティア、アレスの三人がいるのは魔族の本拠地である島……魔族たちが人類を滅ぼすために子孫を作り、武具防具を作り、兵量を作っている魔族たちの国。

 そんな国へとやってきたのだが……その王がいるはずの魔王城がなかった。


「ん?いや、あれじゃないか?」


 僕とアレティアが城が見つからず、困惑していた中、アレスがとある一つの建物を指さす……。


「いやいや、小さすぎでしょ」

 

「あれで城はないわ」

 

 アレスが指差したのは少し他の建物より大きくて立派な建物……立派ではあるが決して城とは呼べないような陳腐な建物をアレスが指さしていた。


「いやいや!それはお前らの価値観がバグっているんだって!あの建物でも十分立派だし、小さめの城にはなっているだろ!あれで間違いないから!」


「「……えぇ?」」

 

 僕とアレティアは困惑の声を上げながら先導するアレスのあとを追って行った。

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