第2話

 停戦処理はあっさりと終わった。

 交渉は特に揉めることもなく決まり、フェルジャンヌ王国軍がドレシア帝国領から引く代わりにドレシア帝国がフェルジャンヌ王国から莫大な金銭を払うことで両国は同意。

 直ちに戦闘が終了し、両軍は矛先を互いから魔王軍の方へと向けることとなった。


「戦線整理は完璧だね」

 

 魔王並びに魔族が根城としているのは人類が暮らしている大陸から少しばかり離れた前世で言うところのイギリスくらいの広さの島である。

 魔族たちはその島から大陸の方へと海を超えて上陸、侵攻してきている。

 

「まぁ、これなら少しばかりの時間を稼げるわね」

 

 魔族一人一人の能力は信じられないほどに高い……人間の兵士10人に対して魔族が一人と言った感じかな?

 正直に言って全世界の国々が協力したとしても魔族の軍勢を人間の軍勢が打ち破れるとは思えない。

 人類軍には僕たちが魔王をサクッと倒してくる間の時間稼ぎをしてもらえればいいだろう。


「……どんな命令をしたらここまで早く戦線に兵士を並べられるのかしら?」


「元々こうなることを見越して準備をしているからね。妥当と言えば妥当だよ」

 

 魔族の侵攻ルート的にその攻勢を防ぎやすいところに防衛戦を作り、そこに全ての国の兵士を満遍なく配備。

 もともと敵対していたとか、そんなの一切関係なく協力して魔王軍と戦えるようにしている。


「にしても……ここまでまだらに配備する必要があったのかしら?同士討ちとか起きたら……」


「大丈夫だよ。いざ、戦闘が起きたらそんなことしている暇なくなるから……地形の有利もあるし、人数有利もある。僕が人体実験を繰り返して作った生物兵器もあるし、ルルド魔導帝国が誇る魔法部隊は彼の国が早々に降伏したことも合ってこの戦争でも無傷だったし、彼らの魔道具もある。問題なく守りきれるはずだよ」


「……人体実験」

 

 僕の言葉を聞いたアレスが不快そうに眉をひそめる。


「それでレース」


 そんなアレスを見なかったことにして僕は視線をレースへと送る。


「君が公爵家の当主になるための功績作りとしてさ……人類側の総司令官にならない?」


「え?」

 

 軽い口調で告げる僕の言葉にレースが驚愕した。

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