第54話

 ドレシア帝国軍が誇る五英将。

 一人一人が英雄クラスの実力を持っている帝国が誇る五人の英傑。

 

「ここは通行止めだよー」

 

 僕は今、そんな彼らを殺して回る作業をしていた。


「……むっ」

 

 馬に乗り、部下を率いて進んでいた五英将の一人、ゴーアの進行を塞ぐように僕は立ち、両手を広げる。


「そんなに急いでどこに行こうと言うのか……僕にはまるでわからないね」

 

 フェルジャンヌ王国の一騎当千の強者を一か所に集めての戦線突破からの総司令部への総攻撃。

 僕が立案し、実行させた作戦。

 戦力を一か所に集めるというリスク、精鋭を敵陣て孤立させ、包囲されるというリスク。

 様々なリスクを考えれば普通は出来ない作戦。

 

 だが、ドレシア帝国軍の現状は普通ではない。

 国の存亡の危機に対してようやく重い腰を上げたドレシア帝国軍であるが、まだ完璧な状態とは言い難く、戦線はガタガタだ。

 陣地にこもっての防衛は出来ても攻勢を仕掛けるような余力はないだろう……例え、一騎当千の強者が戦線から居なかったとしても。


 攻勢には出られない……そして、急ピッチで整えたばかりの総司令部を飛ばされれば指揮系統が未だ不安定なドレシア帝国軍は崩壊する。


「……たぬきめ」

 

 そんな現状下で各戦線に散らばっている五英将が取る手段としては総司令部を守るために駆けつけることだけ。


「別に行軍ルートを予測して、先回りになんてしてないよ?……ふふふ。総司令部を守っている一人の五英将。そして、各戦線に散らばっている四人の五英将。四人全員僕が止められるよう計算しているとかないよ?」


「……想像以上に厄介な相手であるようだな」

 

 ペラペラと内情を明かす僕に対してゴーアが


「それでは俺はここで、貴様を足止めすることとするか」

 

 馬に乗り、巨大な戟を持ったゴーアは戟を構え、馬の腹を蹴り、僕へと突撃してくる。

 いつの間にか鈍い光を放つだけであった鉄の鎧が強い光を放つ黄金の光へと変化している。


「汝ごときが我に敵うなど……驕りすぎだ」

 

 僕は腰に下げている剣を抜き、一振り。


「……ば、か……なぁ」


 膨大な魔力が込められている剣によるその一振りはいともたやすくゴーアを馬ごと両断する。

 瞬殺である。


「ゴーア将軍!?」


「馬鹿な!?」


「そ、そんな……」


 ゴーアを信じ、今の今まで静観していたゴーアの部下たちが自分の頼もしい将軍を失って動揺の声を上げる。


「んじゃ、僕は他も潰さなきゃいけないからここまでで。じゃあね!」

 

 僕はそんな子たちを残して次の場所に向かうため、飛び上がった。

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