第53話

 僕の主導するフェルジャンヌ王国軍による反抗作戦は現在、順調に進んでいる。

 レレイ王国から頭の居なくなったドレシア帝国軍を蹴散らし、そのままドレシア帝国領へと再度侵攻しかけているような状況であった。

 

 それに対してドレシア帝国の皇族の状況として、アレティアは北方民族と激しくやり合っている最中のため動けず、皇位戦の真っ最中である第一皇子と第三皇子の軍勢は内乱と北方民族との戦いでこれ以上ないほどにすり減っていて機能不全となっているため、彼らは何も出来ないような感じであった。


 そんな中、フェルジャンヌ王国と戦っているのが皇位戦の間は静観の構えを取っていた中立のドレシア帝国の貴族並びに軍人たちである。


 ドレシア帝国の主力は皇帝にすべてを捧げる職業軍人たちである。

 自分たちのトップである皇帝が不在であり、政界には一切干渉してはいけない縛りを持っており、特定の皇族の助けになるようなことが出来ず、ずっと静観していたドレシア帝国軍が、ドレシア帝国を超大国にまで押し上げた軍事力を支える主力がとうとう国の滅亡が迫ってきたというタイミングで動いたのだ。


「んー、やっぱ止められるかぁ」

 

 護剣の影たるレイが持ってきてくれる各戦線の様子に対する報告に目を通しながら素直な感想を漏らす。

 精強なドレシア帝国軍によってこれまで順調だったフェルジャンヌ王国軍が止められたのだ。

 一応僕のところではドレシア帝国軍も食い破ったけど……。


「ここで僕が突き抜けるのも危険か。一時停止だな。レイ。伝令を動かすよう他の子にお願いしておいて」


「了解しました」

 

 すぐ隣にいたレイが僕の言葉に頷き、自分のいる天幕から出る。


「んー。戦後の戦力バランスを考えるとドレシア帝国軍を大量に削るのも不味い……この後のアレティアのしっぺ返しを考えるともう少し進んでおきたいし……アレティアが皇帝になることを考えてもっと危機感を煽ってもおきたい……塩梅が難しいだよなぁ。いや、アレティアならドレシア帝国軍を粉みじんにしても問題ないか?」

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