第55話
アレティアがノアに惹かれたところはどこだろうか?
ノアのこの世のものとは思えないほどの美貌だろうか?それもある。
ノアのアレティアと同じ次元にある知能だろうか?それもある。
だが、アレティアがノアに惹かれる理由の中で最も大きいのがノアの天才を超えたいという強い意志である。
アレティアは当然ノアが天才たる自分に尊敬と憧れ、嫉妬の感情を抱いていることに気付いてた。
そして、なんとしてでもアレティアを超えるという強い意志をノアが抱いていることにも気付いていた。
その強い意志が……一人孤独だったアレティアの心を高ぶらせたのだ。
アレティアは戦わなくてはならない。
自分はノアの超えるべき壁であるが故に。
アレティアはノアの超えるべき絶対の天才として、最後の敵として、ノアの前に立ちふさがりい、戦う必要がある。
その義務があるのだ。
「私は勝ちたいのか負けたいのか……どっちだろうね」
アレティアは武者震いか、震える体を抑えて笑みを浮かべる。
「勝って、ノアを独り占めする。例え……ノアが私に敗北してその牙が折られようとも私は一生ノアを可愛がるし、愛し続ける」
そんなアレティアの笑みは、どこか引き攣って見える。
「あぁ……もし、負けたとしたら。ノアは私を見てくれるだろうか?最低限……道具として自分の側に置いてくれるだろうか?……負けても、独り占めできなくとも……最悪は良い。自分と婚約しなくてはいけない状況へと追い込む準備は出来ている。でも、そんなことより……私はノアの特別で居続けたい。私は……私は……私は天才としての自分を守らなきゃいけない」
激突の時はもうすぐだ。
北方民族のすべてを自分の配下とし、戦力の一つとして組み込みだその功績。
ドレシア帝国軍がフェルジャンヌ王国を前に敗走し、領土が食い荒らされ、第一皇子も、第三皇子も情けないという現状を前にただただ強い皇帝を求める帝国の総意に押されるように皇帝位へとつくこととなったアレティア。
「大丈夫だよ。ノア……私はちゃんと特別だから。天才だから……だから、遠慮なく本気で叩き潰しに来て……私も、本気で行くから」
彼女は帝国という牙を手にするため。
美しいドレスへと着替えたアレティアは戴冠式へと挑むため、一歩を踏み出した。
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