第49話
アレスという劇薬に『殺し』を禁止させ、世界に対する影響度を減らそうと画策した僕。
そんな僕の作戦は見事うまく行った。
「ものには限度というものがあるのだが……」
だが、この作戦の結果。
アレスが自分の力を他人に還元すると言って世界中を回って盗賊をボコボコにして、こいつらに仕事を与えてくれと僕の方に盗賊をパスしてくるようになった。
それだけじゃない。
貧民街を救うようにお願いされたり、差別を禁止する法律を作るようにお願いされるし、奴隷を禁止する法律まで作るようお願いされる。
いくら僕でも出来ないことと出来ることがある。
差別の方はともかく、奴隷を禁止する法律を現時点で作れるわけがない。
奴隷制に立脚した社会で急に奴隷を禁止にしたら一体どれだけ社会に与える影響が大きいか……これを納得してもらうのにどれだけの時間がかかったことか。
「……どう考えてもこれはアレスの力じゃなくて僕の力でしょ」
「何を言っているんだ?俺の力が理由でここまでノアと親密になったんだろう?それに俺はノアのお願いで魔族と日夜戦っているわけだろ?その対価としてのお願いだ。俺の力で勝ち取ったお願いなのだから俺の力で間違えないさ!ノアが他人のために力を使わないと言うのであれば使わせるようにするまでだよ!」
「はぁー」
自信満々のアレスに対して深々とため息を吐く……これくらいは大した手間じゃないし、別に良いんだけどね。
社会自体にもいいことだし。
「でも、しばらくはこの盗賊たちで最後ね」
「むっ。なんでだ?」
「今戦争がそろそろ動く。ドレシア帝国の北方。屈強な馬に乗り、広い草原を駆け抜ける北方の騎馬民族がドレシア帝国へと牙を剥いた。その対処に出向いていた第一皇子と第三皇子が共に敗北した。北方の騎馬民族の対処に今、最前線で暴れているアレティアが北方に向かうだろう」
「彼女か……」
「……本当にアレティアとノアは繋がっていないの?動きを見るにどう考えても繋がっているようにしか見えないのだけど?」
「そこは想像に任せるよ」
僕とアレティアは協力関係であり、敵対関係なのである。
「アレティアが戦線から抜ければドレシア帝国の戦線は崩れる。そこを突けばドレシア帝国を落とせる……今戦争はドレシア帝国との争いに片が付けば終わる。既にこの世界はフェルジャンヌ王国とドレシア帝国とで二分されたからね。ドレシア帝国を叩くのは僕の仕事。だからしばらくの間、アレスのお願いは休止だ……僕以外の人には頼まないでね?キレられるから」
僕は最後にアレスへと警告を一つしてから話を終わらせた。
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