第48話
「俺はお前たちを殺さない」
血のむせ返るような匂いが立ち込める森の中。
フルボッコにされ、縛られている盗賊たちへとアレスは宣言する。
「……何を考えてやがる」
アレスの言葉に対して歓喜の表情を浮かべている盗賊が多い中、この集団の首領であった男は表情を歪めながら疑問の声を口にする。
「俺に他人の人生を否定する権利も、他人を断罪する資格もないからな……君たちには君たちなりの理由があって盗賊になったはずだ。俺は君たちのその理由に寄り添いたい」
アレスは真っ直ぐ相手の目を見ながら言葉を話していく。
「……貴族の坊ちゃんが偉そうに」
「確かに俺の制服を見たら貴族かと思うかもしれないが、俺は孤児だよ。スラム生まれの孤児……ただ、こと戦闘の才だけは誰にも負けなかったけどな」
心底嫌そうな首領に対してアレスは自分の素上を明かしながら話していく。
「俺の力は、才はたまたま天から与えられただけのもの。俺が力を持って生まれた以上、俺の力は君たちに還元し、君たちを救うために使いたい。俺に世界を救う力はない。俺に世界を平和にする力はない。それでも、俺は今……目の前にいる人の多くを助け、笑い声をあげられるようサポートしてあげたい」
「……俺らのような犯罪者に何をするってんだ?」
「俺は力があり、そんな俺には利用価値がある。この世界は残酷だ。結局権力者が黒でも白と言えば白となる世界だ。俺たちのような貧民がどれだけ足掻こうともなかなか手に掴めない仕事も権力者であれば何でもないかのように用意できる。俺は俺の力で培ったコネと恩で君たちの思い通りに生活できるよう権力者に頼み込もう。俺が貧民のために権力者に力を使わせよう。君たちは多くの人を襲い、その命を奪った……その被害者たちは君たちを決して許さないだろう。それでも、俺は……例え世界すべてが君たちを否定しようとも俺だけは君たちに寄り添うと誓おう。俺には目の前の人をただ愚直に救うことしかできないから」
「……本気で言ってやがるのか?」
「俺は常に本気だ。それで?お前はどうする?」
アレスは盗賊たちを真っ直ぐ眺め、疑問の声を上げた。
■■■■■
ララティーナが国王陛下となり、それに伴ってララティーナの婚約者となったノアも権力者となって王城で働くようになってから早一か月。
「ノア!今日も盗賊を捕まえてきたぞ!仕事の割り振りを頼む!」
アレスは一切の遠慮なくノアの執務室の扉を開けてその中へと入った。
「……またか」
眉を顰めるノアを見てこれが意趣返しだと思いながらアレスは厄介ごとを遠慮なくノアへとぶん投げた。
あとがき
アレス関連の正義とは何か、悪とは何かって話長くなりすぎじゃね?
こんな詰め込むもんやないやろ……ちょっとずつアレスが成長していくのではなく、ノアがアレスを傀儡にしていく以上こうするしかなかったんだけど。
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