第30話
停滞が続くドレシア帝国との戦線に最高指揮官として身を寄せる僕であるが、実は案外仕事がない。
永遠に睨み合いを続けているような戦線で出来ることなんて特になかった。
「このまま睨み合いを続けていて良いのかしら……」
僕と同じ指揮官用のテントにいるレースが不安そうに口を開く。
「問題ないだろう。ドレシア帝国の第一皇子率いる帝国の主力をここに釘づけに出来ているんだ。それだけでも十分な仕事だろう……あとは他のみんなが上手いことやってくれるさ」
「いや……そうなんだけど……」
「心配ですよね……れっきとした戦果を残せていない現状に思わず歯ぎしりしてしまいます」
歯切れの悪いレースに同意するようにリリが頷く。
「いやぁー、アレスが要ればこんな状況打破してくれると思うんだけどね?」
それに対してリリスがこことは違う場所で魔族と戦っているアレスのことを言及する。
「確かに対魔法結界なんて知ったことでないと言わんばかりに大暴れ出来るアレスが要れば変わるだろうけど……そんなことアレスにさせられはしないだろう?あの人の意思を継ぐアレスにさ、ねぇ?リリス」
「……ノアってば私たちの事情をどれだけ知って……」
「アレスとか言う特級戦力を僕が何の調査もせずに放っておくわけないでしょ?君たちのことに関してはこれ以上ないまでに調べたとも……リリスに関しては何もかもを知った上で肯定するよ」
「……ありがと」
僕の言葉を聞き、リリスは僕から顔を背けながらも感謝の言葉を口にする。
「……なんか私たちはわかり合ってますよ感がズルいです……」
そんな僕とリリスのやり取りを端から見ていたリリが不満げに声を漏らす。
「ふふん!良いでしょー、私はノアの愛人候補なんだし、これくらい当然よ!」
「むむむ……」
「……あれ?いつリリスが僕の愛人候補になったの?いや、別に良いけどね……候補でもさ」
どうせこんな話ももうすぐでしなくなるだろうし、良いだろう……ここで認めてしまっても。
「ほんと!?やったァ!」
「はぁん!?」
「……なんであなたたちはラブロマンスを繰り広げているのよ。まずは目の前の戦線でしょ?」
恋愛感情むき出しのピンク空間を展開していた僕たちに対してレースが呆れたように口を挟む。
「心配しなくても良いさ……どうせもうすぐドレシア帝国軍は撤退していくからさ」
そんなレースに対する僕の答えは非常に簡潔であった。
「えっ……?」
僕の言葉を聞いたレースのあほずらがちょっと滑稽で面白かった。
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