第31話
ドレシア帝国軍と睨み合いを続けてどれくらい経っただろうか?
軽く一ヶ月は超える月日の中、我らが軍とドレシア帝国軍は散発的な衝突を繰り返し、互いに小さな被害を出し合うだけの日々が続いていた。
これまで一度も大規模な攻勢を出ていない。
こんな日々がどこまで続くのか……そんな気分が陣地内に漂い始めた頃だった。
事態が大きく動いたのは。
「ノア様……報告がございます」
「「「……ッ!?」」」
僕の足となり手となり働いてくれている護剣の影……いつの間にかそのナンバー2の実力を持つようになっていたレイが報告のために指揮官用のテント内へと入ってくる。
「うむ。聞こうか」
「ハッ。ドレシア帝国軍を率いる第一皇子が自身の側近並びに精鋭を率いて撤退を開始。恐らくは帝国内の動乱に対応するものと思われます」
「なるほどね……半ば予想がつくけどドレシア帝国内で何が起きた?」
「帝都内にいる第三皇子が戦場へと第一皇子が出ている間に第二皇子を暗殺し、そのまま自身が帝位に就いたことを宣言。己を皇帝とし、帝都内をまとめています」
「第三皇子の状況は?」
「帝都内の不穏分子は牢屋へと投獄し、自分の息のかかるものだけで帝都を囲め、なんとか帝都にだけは自身の影響力をもたらしていますが、他の街や貴族では微妙と行った感じです」
「このまま第三皇子が何事もなく帝位につくことはないか」
「はい。おそらくは第一皇子と第三皇子が争い合う内戦となるでしょう」
「ふむ……そうか。報告感謝しよう。もう下がっても構わん」
「ハッ」
レイは僕の言葉を頷き、そのままこの場を後にする。
「……えっと、誰?あれ」
「僕の部下だよ。情報収集を担当しているね……さて、と。彼女の話は聞いていたね?」
「えっ……第一皇子が撤退したとか……」
「そうだよ。その情報に間違いはない……ドレシア帝国軍は頭と精鋭たちを失った」
「えぇ!?待って、待って……そんなあっさりと事態が!」
「僕はこうなることを想定していた……だからこそ僕はこれまで何の手も打っていなかったんだよ。どうせ勝てるから。ということで頭を失ったドレシア帝国軍を壊滅させるための作戦会議と行こうか」
僕はこの場にいる全員を見てニヤリと笑った。
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