第26話

 相手は国殺しの獅子であり、英雄と称される強者。

 流石にそのままタコ殴りにして殺せるほど甘い相手でもなかった。


「ぬぁッ!」

 

 ゼクは強引に体を震わせて、地面を揺らし、無茶苦茶暴れることで強引に僕から逃れる。


「ふんッ!」

 

 そして、そのまま魔法を乱発。

 辺り一帯を消し飛ばす勢いで魔法を乱雑にぶちまけるゼクに僕は近づけない……魔法の威力たけぇな。


「うーむ。そこまで手札を晒したくはないのだが……そこまでも時間もかけてられぬか」

 

 僕は手札を晒さずに勝つことを諦める。

 そこまでゼクは甘くなかった。


「行くぞォ!」

 

 大地を揺らし、僕へと突撃してくるゼクに対して僕は指を向ける。


「天魔」

 

 僕が支配し、操るのは己の純粋な魔力。

 魔法が強く、国を飲みこむゼクとは対照的と言えよう。


「……え?」

 

 魔法対魔力。

 そのどちらが強いかは議論があるが……少なくとも僕対ゼクは圧倒的に僕の方が上であった。

 僕の放つ魔力はゼクの体を守る魔法を貫き、ゼクの脳天を貫く。

 光にも届く僕の魔力の速さにゼクは何も対処出来ず、そのまま息絶えた。


「……最初からこうすればよかったわ」


 やっぱ拳で殴るとかダメだね。

 魔力を纏うよりも飛ばすほうが神。飛び道具は正義なんだよね、結局。

 僕はぶっ倒れたゼクの体を持ち上げ、砦の方へと戻っていた。

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