第27話
「堕ちろ、英雄」
空を舞い、天空を支配する僕は手に持ったゼクの遺体を地面へと投げ捨てる。
硬く、分厚い筋肉に覆われるゼクの体ではあるが高所より地面に落とされればそんな筋肉など何の意味もなさない。
ただの肉の塊として地面に染みを作り、肉片が飛び散る。
「よくぞ耐えた……我が帰還の時まで」
ゼクを地面に落とした僕はその後、砦の前にまでその高度を下げ、口を開く。
いくら砦という地理的なアドバンデージがあるとは言え、1000の兵士で1万を超える兵士を相手にするのは骨が折れると言うもの。
生き残っている兵士のすべてが息も絶え絶えと言う状態になっていた。
「後は我に任せると良い」
僕はアレティアやゼク程とは言わぬまでも十分高位の魔法を唱え、その魔法の標的としてゼクの死体を前に右往左往しているフォレンク王国の兵士に向ける。
「闇に呑まれよ、脆弱にして惰弱な生贄ども」
僕の魔法が発動し、空を闇が包む。
「……え?」
そして───闇が、堕ちる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!」
「逃げろ、逃げろッ!?」
「はやすgッ!?」
地上へとどんどん堕ちていく闇は津波のように大地を走り、削り、地面の上に存在するありとあらゆるものを呑み込んでいく。
そして、喧騒に包まれていた砦の下の地上は恐ろしいほどの静寂に包まれる。
「……ふぅー」
そこそこの量の魔力を消費した僕は深く息を吐いた後、視線を後方へと戻す。
「諸君。我が来るまでの間、よく耐えてくれた。深く感謝しよう」
僕は空に浮いたまま言葉を話していく。
「フォレンク王国の対処は我が一人でしてみせよう……アレナ卿。ルクス連合国の対処は卿に一任しても問題ありませんかな?」
「……え、あっ……うん。大丈夫です」
僕の言葉にアレナ卿は頷く。
「それでは我らはここで一度、別れることにしましょう……忠実にして精強なる英雄たちよ。汝らのおかげで我は勝つことが出来た。ありがとう。感謝の言葉を口にするとともにこれよりルクス連合国と戦う諸君らの武運を祈り、我はここまでとさせてもらう」
僕は言葉を閉め、視線を再び戻し……地上を埋め尽くす『闇』へと視線を向けた。
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