第21話
別に僕がやろうと思えば魔法を使い、一つの陣地を盛大に破壊し、そのまま敵軍を壊滅させることも可能だ。
だが、それを為すよりも僕は自分が率いる軍が勝利することを優先する。
僕は勝利をその手に掴むことが出来る自軍が欲しいのだ。
「……本当にこれだけで川が氾濫するのでしょうか?」
リーミャ王国の進軍を防いでいるルクス連合国の自然の砦たるリステン川。
その下流に大量の土砂を魔法で作って水をせき止めるという作業をしている兵士たちを少し後ろから眺める僕とアレナ卿……アレナ卿は目の前の光景を見て不安そうに口を開く。
「氾濫を起こすのは簡単ですが」
「それがルクス連合国への壊滅的な被害に繋がるでしょうか?」
川を氾濫させようと思えば簡単だ。
土魔法で川をせき止め、水魔法で大量の水を川にぶち込んでやればいい。
かなり大規模な魔法となるが……別に不可能ではない。
しかし、この作戦は現実的な作戦ではないとされている。
その理由は簡単で川の氾濫に魔法で対処することも決して不可能ではないのだ。
魔法があるこの世界では自然の脅威に割と魔法で立ち向かえてしまうのだ。
「繋がるでしょう……突然の物事への対処ってのは難しいですから。川が氾濫する。それがわかっていればそれに備え、対処することも出来るでしょう。ですが、いきなり川が氾濫したらパニックになり、組織的な対処が出来ず、流されてしまう……今作戦が敵に知られることがないようこの間も自軍に攻勢を仕掛けさせていますし、川に水を入れるタイミングでも夜襲を仕掛けさせ、川から意識を逸らさせるつもりです。おそらくうまく行くでしょう」
「なるほど……」
僕の言葉にアレナ卿が頷く。
「確かに突然の川の氾濫には対処できないかもしれません」
「そうでしょう?この作戦にそこまでの労力もかかりません。試してみる価値は十分あると思いますよ」
勝てる軍。
結局のところ軍隊に必要なのは士気だ。
自分たちは勝てる、強いのだという自負を与えてやれば軍は割と簡単に勝てる軍となってくれる……川が氾濫したときの水の量が二倍ぐらいになってもあまりわかんないよね?
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